「【”1752年の漁師ロック” 現代の英国音楽界を席巻する。 ”人生の本当の友達とは何か”という事に気付かせてくれる作品。】」フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛をこめて NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”1752年の漁師ロック” 現代の英国音楽界を席巻する。 ”人生の本当の友達とは何か”という事に気付かせてくれる作品。】
ロンドンの音楽マネージャー、ダニー(ダニエル・メイズ)は友人の結婚祝いを兼ね、上司とともに英国南西部の小さな港町”ポート・アイザック”を訪れる。
港で聴いた、歌う漁師たち、”フィッシャーマンズ・フレンズ”の”シー・シャンティ”に聞き惚れるダニー達。
特にダニーは無骨な漁師たちが野太い声の歌の魅力に引き込まれる。それを見た上司たちは”契約しろよ”と言い、自分たちはロンドンに戻ってしまう。
大真面目に彼らを口説くダニー。が、それは少し意地悪な上司たちの悪戯だった・・。
ーダニーの上司たちが、”フィッシャーマンズ・フレンズ”の歌の本当の素晴らしさに気付いておらず、音楽を”ビジネス”としか考えていないことが良く分かる。-
漁師たちの頑固なリーダー、ジム(ジェームズ・ピュアフォイ:渋い、渋すぎる・・。少しヒュー・ジャックマンに似ている。歌声も・・)はロンドンから”テイマー川を越えて、年に2回だけ来る連中”に対し、良い感情を持っていない。
ダニーも、上司たちから”悪戯だった”事を告げられ、こっそり逃げようとするが(情けないなあ。)、ジムの娘アルウィン(タペンス・ミドルトン:美しい・・。つい一昨日、別の映画で観たばかりだが、現代の質素な衣装も宜しい。)に惹かれて、居残る事に。
-情けないなあ、でもダニーの気持ちは良く分かる・・。ー
ダニーに対するアルウィンの最初の印象は最悪で、可愛い娘タムシンの前で“マスかき野郎”と言ってしまう程である・・。
ーこの後、ダニーがジムの家を訪問した際に、タムシンが”ママ!マスかき野郎が来たよ!”という場面では、私の周囲で噴き出す人、多数・・・。
”タムシンちゃん、駄目だよ!そんな言葉を使っては・・”ー
ダニーの”シー・シャンティ”を愛する姿と熱意と人柄に触れ、徐々に心を開いていく漁師たち。
タムシンと遊ぶダニーの姿を見て、アルウィンの態度も徐々に変わってくる。
アルウィンは自らを“音楽オタク”というだけあり、部屋には多数のLPレコードがあり、盛り上がる二人。
アルウィンの”今の若い人は好きな曲だけ、”iPod”にダウンロードしているけれど、アルバムは通して聴くべき・・”という言葉には心の中で大いに賛同する。
漁師たちが集うローワン(サム・スウェインズベリー)が母と営む”ゴールデン・ライオン・パブ”で行われる音楽クイズの質問もかなり難しく、この港町の人々の音楽好きが良く分かるシーンである。
-このパブの件でダニーとアルウィン及び漁師たちの中は一時険悪になってしまうのだが・・ー
■面白き場面、涙する場面は多数あるのだが、特に印象に残った所
・英国国歌をTVの生中継で歌う事になり、”フィッシャーマンズ・フレンズ”が歌った”国歌”。
おろおろするダニー及びTV関係者たちの姿。
が、これをきっかけに彼らの動画再生回数は100万回を突破する・・。
・70歳を超えて、意気軒高だったジェイゴ(デヴィッド・ヘイマン)が海が一望に見える自宅テラスで静に息を引き取っていた夕景の場面。
そして、彼を水葬する際に”フィッシャーマンズ・フレンズ”が涙を流しながら”シー・シャンティ”を歌う姿。
ーこのシーンは沁みたなあ・・。涙しますよ・・。-
イギリスの港町の漁師たちの強い絆をコメディ要素も絡ませながら描き出すヒューマン映画。その仲間に新たに加わった男が生きるべき道を見つけていく姿にも涙する。
<”真の友達とはどういうものか”という事を、改めて思い出させてくれる映画である。
”フィッシャーマンズ・フレンズ”が披露する数々の歌の魅力的な事も忘れ難い。>
<2020年1月13日 劇場にて鑑賞>