劇場公開日 2022年2月25日

「探偵を呼ぶから悲劇が起きるのではないか?」ナイル殺人事件 @花/王様のねこさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0探偵を呼ぶから悲劇が起きるのではないか?

2022年2月26日
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鑑賞方法:映画館

単純

ストーリーがナイル川の様にゆったりと流れていた。

穏やかすぎる人物紹介パート。
今回がナイル殺人事件を観るのは初見だったけど、本作はリメイクで改変された部分もあったとか。
それか!映画を観た時の違和感!!

アガサクリスティの時代に黒人のサンソン歌手なんて、差別の対象だったはずなのに、わざわざ友人関係を築き豪華客船に招待するかね?って思ってしまった。

時代背景にそぐわない俳優の起用や物語の改変だったと感じる。

ストーリーは殺人が起こるまでが長い。
CGで作られた美しいエジプトの風景は楽しめたけど、登場人物も限られている割にキャラクター性が薄いので魅力を感じない。

ポアロが容疑者を尋問する場面が見どころのはずなのに、自分の脳内で妄想した「この人が犯人だったら、動機はこうじゃない?」って話を本人に話して憤慨させるワンパターン攻撃。
どうして、名探偵や名刑事と名のつく輩は犯人の感情を逆撫でして被害を増やしたり、崖に追い詰めたりするんだろうか?
そういう性分が適職だと考えたら、名探偵や名刑事は事件に居合わせるのではなくて、事件を呼び込む体質とかなんじゃないか。
変質者に好かれる性質とかあるけど、むしろ人の醜い内面や恐ろしい性質を暴くことに快感や光悦とした気持ちを抱くなら、それを孤独を生きる糧にしているとしたら、甚だ悪趣味だしやはり人間としてはどこか歪なのかもしれない。

作中では「愛」について語られるが「エゴ」については語られないのが不思議。

私が愛している「貴方も私と同じ気持ちのはずだ」と言う考え方は恐ろしい。
相手が愛してるものなんて、時間や場所によっていくらでも変化する。変わらないのは本人の心持ちだけ。つまり「これは私のエゴだ」と言ってしまった方がよっぽど正直だと思う。

誰かを好きだから誰かを殺す。
誰かに誠実でいたいから嘘をつく。
誰かを思っていたいから隠す。

これのいったいどこが愛なのか。
いや、愛なのか。
それのどこが「エゴ」と違うのか。

今作ではどのキャラクターの「愛するが故の結末」に共感することはできなかった。

アガサクリスティ作品で共感してしまったらダメだと思うからある意味正解ではあるが。

後味の悪い粉末のお茶を飲んだ気分だった。
多分、3作目は劇場で観ない。

@花/王様のねこ