「今できる、小さなことの積み重ね」ラスト・クリスマス 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)
今できる、小さなことの積み重ね
序盤、ケイトの情緒不安定の原因が何かの病気のためらしい、と仄めかされるが、出自や家族の問題に起因する精神的なものだと思って観てました。そう思ってるうちは、なんだか盛り上がらない展開だなぁと少しダレかけてたのですが、『心臓移植』を受けた事実が明らかになった瞬間から、景色が一変。
心臓移植を受けた気の毒な人、という見方をしがちな周囲の人の同情やいたわりは、ありがたくもあるが、本人にとっては、気持ちのうえで窮屈な制約になることもある。
例えば、好きなことをしたくても、心臓に負担のかかるようなことだとしたら、程度に関わらず反対されるだろうし、心臓を提供してくれた人の好意を無駄にしないためにも無理してはいけない、という有形無形の圧を感じてしまうことがあるのではないか。そんなに過剰に意識しなくてもいいと言ってくれる人もいると思うが、何かを諦めることで、結果的に芯の定まらないフラフラした生き方をしてる(そういう評価を自分でしてる場合だろうと、他人から言われようと)こと自体が罪深いことに感じられて自己嫌悪に陥ることもあると思う。自分の心臓で生きている人よりは敏感に考えてしまうことはあり得るのではないか。
(提供者への感謝の気持ちが生きる支えになることもあるし、身体的負担を避けるための一定の制約が必要な場合もあると思います。一概に負担とか制約とかのネガティヴな情感に結びつけてしまうのも危険なことなので、とても複雑で、私には整理できない難しい問題です。なので、上記の内容はあくまでもケイトの場合の心情を推し量っての個別のもので、決して一般化してるわけではありません)
だからこそ、潜在意識の働き(物語的には、切っても切れないあのパートナーの導き)が、ケイトに、小さなことかもしれないけれど何か人の役に立てること、誰かが喜んでくれることを選択させたのだと思う。
『その小さなことの積み重ねがその人の人格を作る。』
そういえば、アナ雪2でも、次の正しいこと、今できることをしよう!と逆境で打ちひしがれたアナが立ち上がります。
最近、どこの国の映画でも、社会の閉塞感が強くて、〝青臭いかもしれないけれど羨ましいほど伸びやかな若者の夢〟を無邪気に語るようなものより、〝取り敢えず身近でできるささやかな自己実現〟を目指すことに価値を見出す作品が多いような気がします。
いただいたコメントを噛みしめながら振り返ってたら、最初思ってたよりも味わい深い映画に思えてきたので、★半分上乗せしました。
エミリア・クラークさんは、海外ドラマのゲームオブスローンズで知りました。
世界一キライなあなたへもかなり良かったですね。確かにハンソロはかわいそうなことになってました。
私の中では、今一番好きな女優さんの一人です。笑
琥珀さんへ
館内、確かに凄かったです。同じ列の女の子はタオルで顔を覆ってました。準備のいい事w
俺はケイトがトムのアパートを訪ねた場面が「春の小川」、2人が各々ストレッチャーで病院に搬送される場面が「華厳の滝」、後はずっと「信濃川」。日本紀行かよ?w
bionさん、ありがとうございます。
〝あの後〟家族に対しても(私も心当たりありますが、身内についてはどうしても気にくわないところを後先考えず遠慮なく攻撃してしまいがちで、この描き方も秀逸でした)大事な友達に話しかける時と同じような、少しの優しさと想像力のある接し方をするようになり、色々なことが愛おしく見えるようになってました。このさりげない〝視点の変化〟、心の成長がまた泣かせてくれました。
ジリオロッソさん、ありがとうございます。
そのような大病を経験してるからこそ
〝生かされてる〟という思いのこもった胸を打つ姿がこちらにも伝わってくるのですね。一層深みのある作品に感じられます。
「世界一キライなあなたへ」を観て以来、大好きな女優さんです。
実生活ではくも膜下出血と動脈瘤を患い、2度の大手術を乗り越えたそうで、よくここまで回復出来たなぁと思っていました。
映画の中で病に倒れるシーンを見てその事を思い出し、涙が止まらなかったです。
彼女のような小柄でグラマラスな女優さんは貴重な存在。
これからの活躍が益々楽しみになりました。