「なんでおばあちゃんのお葬式の時に、あんなに餅搗きたいって言ったの?」もち 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
なんでおばあちゃんのお葬式の時に、あんなに餅搗きたいって言ったの?
ドキュメンタリによせたフィクション。時折見せるユナの大人びた表情がとてもいい。
現代においてどの地方に行っても希薄になっていく地域性を、ここでは「餅」がつないでいる。その粘りのイメージが地域の密着度を連想するし、白は(ユナの肌の色も)純朴さを連想させる。だけど実際はそうでもないのだろう。落ちた橋が、まさにその暗示。過去と現在、都会と鄙は隔絶しているのが現実だ。これはね、しょうがないのだよ。交通機関が発達し、食糧の日持ちもすすみ、通信手段も距離を弊害としなくなって生活圏が拡大した現代、鄙は取り残されていく運命なのだ。人はそうやって手にした文明と引き換えに、先祖伝来受け継いできた文化、アイデンティティを捨てている。そのことに今を生きている幾人の人が理解しているのだろう。残念ながら、この映像のなかの風景も消えていくものだ。それをこうして”記録”することは、かけがえのないこと。まるで戦前全国をくまなく歩いて記録をとどめた宮本常一の功績と同類。
冒頭の餅搗きのシーンで、ぐっとくる。しかし、この映画は現在(現状)は描いていたが、過去(伝承)の描写がなく、この地域にとってどれほど餅食文化が受け継がれてきたのかは、よそ者にはちょっと感じきれなかった。60分は短かった。
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