劇場公開日 2024年4月12日

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「大人だからこそ刺さる物語」ソウルフル・ワールド kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0大人だからこそ刺さる物語

2024年4月17日
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鑑賞方法:映画館

コロナ禍で浸透したものの1つに動画のサブスクサービスがあげられる。オリジナル映画・ドラマの存在も大きかったが、コロナ禍で必要性が増した事が大きかった。映画館で観てればいいって時代ではなくなった。本作はそんなコロナ禍で劇場公開が見送られた映画の1つ。とても楽しみにしていたが、(理由はないけど)Disney+に入りたくなくて泣く泣くスルーしていた映画だ。だから今回の劇場公開は嬉しかった。ただ正直に言えば字幕版で観たかった。
本作は、プロのミュージシャンを目指すジョーが、憧れのカルテットに参加してライブすることができるチャンスをつかんだその日に命を落とし、迷い込んだ世界で出会ったソウル(22番)と現世に戻ろうとする話。ジョーが魅せられた音楽がジャズであること、死後の世界を描いていること、夢を追い求めることの意味を問いかける。内容を考えると完全に大人向けの映画に見える。実際、問いかけられるメッセージは大人にこそ響くような気がしてしまう。
生きることの意味、人生の目的、命をつなぐことを伝えてくる映画だが、結局生きてるってだけで素晴らしいし、世界は美しいってことにつながるんだと思う。それはこの先の人生が長い若者よりも人生を折り返した大人の方が刺さってしまう。
22番のソウルとのやりとりも奥深い。大人の価値観でこうに決まってるって決めつけられた子どもの気持ちが描かれていることにハッとさせられた。子どもの可能性を大人が狭めていいはずがない。大人の皆さん、こんなことしてませんよね?と問いかけられた感じがする。ピクサーっぽいなー。
なにげに、ソウルの世界を管理するジェリーたちとテリーの存在も印象的だ。線だけで描かれるピカソの作品のようなキャラクターは、神とは違うが妙な怖さを感じてしまう。ディズニーアニメとしてはかなり異色だと思う。あんなキャラクターよく考えついたな。
ジョーの身勝手さもわかるし、22番の命に向き合ったところも共感する。もう次につなごうと考えてしまう年頃なんだよな(ジョーが何歳なのかはわからなかったけど)。それでもジョーの最後のセリフに泣かされてしまうんだから困ってしまう。いや、この年だからこそ最後のセリフに流されてしまうのかも。
ピクサーの懐の深さには驚かされるばかりだ。よくこんな映画を作ろうと思ったな!

kenshuchu