「重いテーマを見事にエンタメにしてしまうピクサーの脚本力」ソウルフル・ワールド p.f.nagaさんの映画レビュー(感想・評価)
重いテーマを見事にエンタメにしてしまうピクサーの脚本力
生きる意味を見出す主人公二人に共感し、自分のことも重ね合わせて考えさせられた。特に、ラスト近くでジョーが両親から愛情を受けていたことなどを回想して涙を流すシーンは泣けた。PERFECT DAYSのエンディングの役所宏司の涙を連想した。
生きる意味を感じる瞬間は、日常の生活の中にあるというのはその通りだと思った。「成功するという夢」が実現した瞬間も良いけど、振り返ってじわりと心が温かくなるような体験も確かに良い。
もう一人の22番がだんだんと「生きるってうれしいことかも」と感じていくのも説得力がある。おいしい食べ物で人生観が変わる体験なども、顔の表情でうまく表現されていて共感した。やさぐれた22番をジョーが助けに行く場面も感動的だった。
ジョーのお母さんがついにジョーの夢を理解してくれるところや、22番が床屋でキャンディーをもらう無垢な行動とか、床屋さんがかつての夢を語りつつ現実の満足を話すシーンとか、他にもいろいろ良い場面があって共感した。そして、自分のことも考えさせられた。
天国に向かうエスカレーターに対して地球にダイブしていくソウルたちとか、つらいことをこじらせたソウルが暴れることとか、現実とあの世との出入にゾーンに入った人が介在することなど、設定がうまく不自然さがない。重いテーマをエンタメにしてしまうピクサーの脚本力はすごい。
たくさんのソウルが天国に向かうエスカレーターは、コロナで多くの死者が出る時期に当たってしまっては見るに堪えないだろう。良い映画なのに不運だったと思う。
生きる意味などの、深いテーマの映画は好みなので評価は高くなったけど、全編で生きる意味を訴えているので説教臭いのはダメという人には薦められないかも。