劇場公開日 2024年4月12日

「生きる意味と価値観への別解をくれる。」ソウルフル・ワールド ゆちこさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0生きる意味と価値観への別解をくれる。

2022年9月14日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

夢を叶えるために、何かを成し遂げるために生きてるんだ。
生きるってそれだけじゃないよ。
でも世界は成功者が優性に見えてしまうんだ。
どれもこれも理解できる。

それらを腹に落とした上で、
「目的にとらわれ過ぎて、ありふれた奇跡を見逃さないで。」
価値観を押し付けずに、そんな視点をプレゼントしてくれる優しい映画。

風に舞う葉っぱがキレイ、母からの愛を感じる、大好きなピザを味わう時間、床屋で店主とおしゃべりするひととき、教え子の成長。
よくよく思うと、どれもこれも奇跡みたいなしあわせのはずなのに。

夢見ていたアーティストとしてのステージを叶えても、自分が執着するほど全てを賭けた夢がこんなものか…と落胆する。
夢を叶える場面と、22番と過ごした時間を噛み締める生活のなんてことない場面。彼は後者の方がしあわせそうで、ここのアニメーションならではの表現が素敵。

エンタメとしては死後の世界を描く前衛さ、川栄李奈さんのお芝居の上手さ、主人公がジャズミュージシャンが夢ってことで散りばめられた上質な音楽が楽しい。キャラクターの感情表現も奥行きと繊細さがあって、大味じゃなかったのが綺麗事に見せないテクニックだったと思う。

パッションで鼓舞する系作品とは違ったアプローチで、自分を好きになるきっかけをくれる。

ゆちこ