「怖い領域にもガシガシと踏み込んでいく果敢さ」ソウルフル・ワールド 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
怖い領域にもガシガシと踏み込んでいく果敢さ
特に前知識を入れてなかったので、ピクサーがジャズをモチーフにした映画を作ったのだと思いこんでいた。実際、主人公はジャズマン(に憧れる音楽教師)だし、劇中にはジャズを演奏する印象的なシーンがいくつかある。
しかし、お決まりの夢をつかみたい男の苦闘と奮闘、という物語は、「人間が持つ執着心」というテーマに置き換えられ、そして映画はさらに大きくてテーマへと際限なく広がっていく。要するに「人間とはなにか?魂とはなにか?」という哲学的な大命題に手を出しているのだ。
しかも、魂が作られていく過程が、非常にファンタジックでありながらも、ロジカルに描かれていることに驚く。この映画は「誰もが違っていて素晴らしい」なんてキレイごとは言わない。例えば人間なんていくつかのパターンにたやすく分類できてしまうし、本人の意思で属性や性格を変えるのにも限界がある。そんな皮肉めいた人間分析を、こんなに楽しいビジュアルで描いてしまったことに驚く。
もちろんピクサーの映画が、人間なんてつまらない存在だ、なんて結論に行き着くわけではないのだが、だからといって安易な人生讃歌でもない。とてもポジティブな映画だけれど、普通なら向き合いたくないようなことにもきちんと目を逸していない、勇猛果敢な作り手の姿勢に拍手を送りたい。
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