テッド・バンディ : 特集
“最悪のシリアルキラー”衝撃の真実を暴く――気づけば、虜になっている
ザック・エフロンがすべてをかなぐり捨て、実在の“天才殺人鬼”を熱演!
編集者も女性客も映画監督も… 危ういカリスマ性の“沼”にハマる――

30人以上の女性を惨殺した実在の殺人鬼を描く「テッド・バンディ」が、12月20日に公開を迎える。主演は「グレイテスト・ショーマン」などのザック・エフロン。これまでの“爽やかな好青年”というイメージはかなぐり捨て、計り知れない不気味な“存在”を怪演してみせた。
バーで出会い、瞬時に恋に落ちたテッド・バンディ(エフロン)と、シングルマザーのリズ(リリー・コリンズ)。幸福な日々を送るある日、リズは新聞紙面に、愛するバンディの顔を見つける。よく見ると、それは彼に酷似した似顔絵だった。そしてそこには、「連続女性失踪・誘拐事件の犯人」という文言が添えられていた――。
テッド・バンディとは何者か? 強烈なカリスマ性は、数々の伝説を残した…
シリアルキラーの“語源” 弁護士を解雇し自分で弁護 脱獄と獄中結婚

“シリアルキラー”と聞けば、ほとんどの人が“常軌を逸した猟奇殺人犯”と連想するだろう。広く認知されている名詞だが、初めて使用されたのは1984年と、かなり新しい言葉である。元FBI捜査官ロバート・ケネス・レスラー氏が、ある男を形容するため、このシリアルキラーという概念を提唱した。
男の名はテッド・バンディ。“極めて邪悪、衝撃的に凶悪で卑劣”として断罪された彼は、醜悪な内面とは裏腹に、美しい容姿とIQ160の天才的頭脳を持っていた。女性たちを惹きつける術に長け、そのカリスマ性を惜しげもなく振りまいては、凄惨な犯行を繰り返した。

数々のエピソードが残されている。
・30人以上の女性を惨殺したとされる 当時の言葉では形容不可能の残虐性 ・IQは160 天才的な頭脳で犯罪を重ね、脱獄を繰り返す ・容姿端麗 裁判では女性ファンが大挙して押しかけ、声援が飛んだ ・裁判中に証人との結婚を宣言 法的に認められ、婚姻を結ぶ ・裁判長をして「法廷で活躍する君を見たかった」と言わしめる ・3度の死刑宣告 執行後、刑務所の外では花火が打ち上げられた
裁判は全米にテレビ中継され、女性ファンが法廷に駆け付けた。バンディのショーアップされた自己弁護に、女性たちは恍惚のため息を漏らした。吐き気をもよおす残虐性が白日のもとにさらされても、彼女らはこの男に夢中だった。
一体、それはなぜなのか? 映画「テッド・バンディ」は、バンディの最も近くにいながら、殺されることのなかった女性リズの視点を通じ、“最悪のシリアルキラー”にまつわる衝撃の真実に迫っていく。
なぜ人々は、この男に翻弄されてしまうのか――?
「テッド・バンディ」という“沼”にハマった人々が語る、“危うい欲望”

頭では拒絶しているのに、気付けば虜になっている――。底なし沼に足を踏み入れ、意思とは無関係にずぶずぶと沈んでいった人々の証言を、紹介しよう。
・映画.com女性編集スタッフは…「理屈ではなく心がハマっていく」
バンディは、女性がハマるすべての要素を兼ね備えているんですよね。見た目はもちろん、法学部出身だから将来性もあり、「愛している」など女性が欲しい言葉をかけてくれる。さらに子どもも可愛がってくれる。一度結婚に失敗したリズにとって、最高の恋人なんです。
女性ならみんな、「わかる~!」と思うようなシーンだらけでした。だからこそ、観客はリズに共感し、理屈ではなく心がバンディにハマっていくんです。また、ザック・エフロンの目がとにかくきれいで、ビー玉みたいで……ズルい!

・男性編集スタッフは…「ラストの展開にゾッとした」
バンディのことは知っていましたが、僕の認識が音を立てて崩れていくのを感じました。徹底して無罪を主張し、周囲に懇願する姿を見ると、「本当は冤罪なのでは?」と混乱していく。
見る者の善悪の境界線を融解させ、深い混沌に包み込まれるようなシビアな演出に翻弄されていると、最後の最後にゾッとする“告白”が待ち受けています。あれ、裁判記録にも絶対に残っていないメッセージですよね。正直、目の奥がチリチリするほど衝撃でした。

・試写会でも…観客の8割が虜に
鑑賞後の観客(約100人の男女)にアンケートを実施した結果、およそ8割が「バンディに魅力を感じた」と回答。具体的には「頭が切れる」「自信に満ちた行動」というポイントに評価が集中していた。容姿はもちろん、法廷でのバンディの堂々たる振る舞いに、多くの観客がなす術もなくハートを撃ち抜かれたようだ。

・映画界の巨匠も、この男の沼にハマった…!
監督を務めたのはジョー・バーリンジャー。ある伝説的ドキュメンタリーを手掛けた、知る人ぞ知る巨匠だ。後述するが、バーリンジャー監督は“バンディを知り尽くした男”でもある。本作を通じて、この事件に新たな地平を切り拓いた。

本作が他の映画とは一線を画す、“異例の作品”である理由とは
映画ライターが語る、バーリンジャー監督の“あまりにも優れた手腕”

では、そのバーリンジャー監督がいかに優れたクリエイターなのか。同監督に詳しい映画ライター・高橋諭治氏に語ってもらった。

