「愛していないから殺さない」テッド・バンディ つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
愛していないから殺さない
シリアルキラーの祖。サイコパスの中のサイコパス。怪獣界でのゴジラ、ポップ界でのマイケル・ジャクソンがシリアルキラー界でのデッド・バンディだ。
つまりキング・オブ・シリアルキラー。スーパースターなのである。
異常犯罪や連続殺人鬼が大好きな私にとっては垂涎の作品なのだ。
とは言っても、彼らが残虐行為に及んでいる場面が見たいとかではなく、思考や行動を読み解く(読み解けないけどね)プロファイリング的なことが好きなので、本作が恋人とされているリズの視点で描かれる、獄中のバンディ、法廷でのバンディがメインなのは非常に興味をひかれた。
平然と嘘をつくバンディ、自信に溢れるバンディ、心にもないことを言うバンディ、急にキレたり、短絡的な行動をするバンディ、その全てが面白かった。
だけど本当は、バンディは本当にシリアルキラーなのか?とリズと同じように翻弄される事を楽しむ作品なのだと思う。
犯行シーンは一切出てこないし、バンディを有罪にする証拠も弱くみえるように作られていたと思う。
本当に犯人なの?違うんじゃないの?と、多くの犠牲者が陥ってしまった、バンディを信じるという罠に、観るものをかける気満々で作られていたね。
あとは、リズとの愛は本物なのか?ってところか。信じるの延長にそれはあると思うね。
もし仮に犯人だとしても愛だけは本物だったと信じたい人の気持ちはわかる。自分もどちらかといえばそっち派だ。本作の監督も信じたいと言っていたように思う。
しかしこれから全力でリズとの愛を否定しなければならない。バンディもそんな風に思われたら心外だろうしね。リズを愛してなどいない。
まずは彼は本当に犯人なのかの部分は、黒も黒、真っ黒です。正真正銘シリアルキラーです。
状況証拠はそれなりにあってバンディの弁護団が取引を薦めるほど有罪確定。
投獄されてからだが、結局バンディは犯行を認めているし、証言した場所から遺体も出ている。
次に愛について。
バンディのターゲットは主に15歳から25歳で、殺すことで全てを支配できると考えている。
リズがバンディと出会ったときは30歳くらいのシングルマザーで、バンディのターゲット外だった。
愛しているから殺さなかったのではなく、殺さないくらい愛どころか興味すらなかったのだ。
愛していないから殺さないというわけ。
確か本物は一回くらい殺されかけたはずだけどね。
ではなぜ愛していないリズに執着するのかだけど、これはもしかするとリズの娘を狙っていたんじゃないかと思うんだ。育つのを待っていた。
バンディが二度目の脱獄をしたときの最後の犠牲者は12歳の少女だったそうです。これは、リズの娘の予行、または身代わりだったのかもと思う。
まさに、極めて邪悪、衝撃的に凶悪で卑劣。
なんか作品レビューってよりバンディ解説みたいになってしまったけど、まあいいや。
数いるシリアルキラーの中でもバンディ大好きなんだよね。だって本当にヤバいんだもの。サイコパスの見本みたいな人なんだもの。
他のサイコパス犯罪映画とかも観るけど、作られたサイコパスはどこか人間味があってダメなんだよね。
その点、本物は違う。ヤバすぎてヤバそうに見えないくらいヤバい。
普通は嘘ついたりしたら多少は動揺するものだが全く動揺しないどころか自信満々なのがサイコパス。全編ヤバいシーンの連続です。