劇場公開日 2020年10月23日

  • 予告編を見る

「横浜流星、夢叶う」きみの瞳(め)が問いかけている First Orderさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0横浜流星、夢叶う

2020年10月15日
PCから投稿

横浜流星、元極真空手中学生世界大会優勝者、彼はでデビュー以来その格闘スキルを生かした本格的アクション映画への出演を希望していた。だがその夢はなかなか叶えられなかった、そのスキルはドラマ・バラエティーで数ミリ披露するだけだった。かつて日本はアクション映画大国であった、だがいまや残骸となった。日々作られるのは少女漫画原作、恋愛、泣き、仕事、日常、家族、病院、アクションのぬるいサスペンス、あとは賞ねらいの劣等感や不安をいじりまわす作品。女性ユーザー
重視、テレビとの連動、だが最大の理由は撮影に金と時間をかけたくないからだ。アクションものはアクションシーンを何度も取り直すので時間がかかる、人気タレントの拘束時間は出来るだけ短くしなければならない。僅かに旧Vシネマ系のヤクザものや大人数でワーキャーやらすヤンキーもの、これだとタレント一人の拘束時間は短くてすむ、にかつての栄光のにおいを残すだけだった。横浜も例外ではなかった、これまで女子向け恋愛もの、薄味のサスペンスやコメディ、大して興味もない音楽ネタ、アクションのぬるい男子チア、キミスイ女優相手に和菓子で対決、和菓子どころかマシュマロみたいな役をやらされた。映画の興業収入は十五億に届かず、テレビ視聴率は一桁を連発した。彼に限らず今どきの若手男優が演じる役はマシュマロみたいなのが多い。演技の幅を広げるためとも主張する人もいる、そう主張する人はマシュマロ役が多くマッチョ役があまりも少ない現状をどう説明するのだろうか。格闘など女子が引く、女子受けするのせいぜい血が流れないチャンバラ程度、多くの制作者たちはそんなやらない理由ばかりを主張する、その結果男がマシュマロばかりになった。そんな制作者たちは視聴率の主体が中高年男性にかわった現状ですら、F1からF3のスポンサーを押さえている、世代別視聴率では悪くないなどとの建前と、年寄り臭いことはしたくない、若いタレントとつきあいたいなどの本音をセットにして女子向け作品を製造している。だがこの「きみの瞳」の制作スタッフたちは日本映画の現状には疑問を持っていたのではないだろうか、生活のため女子向けの作品ばかり作っていたが心の中には男が熱くなれる作品を作りたいという志を抱いていたのではないだろうか。各企業からなる映画の制作委員会のメンバーは基本的には会社員で日々の業務に追われシナリオを読む余裕はない、分かるの人気タレントの名とエンタメおおざっぱな傾向だけである。なんとか半歩下がって安全なところで仕事をしたい、そんな残念な気持ちを持つ者が多い。この映画の制作スタッフたちは言葉をつくして後ろ向きの者たちを説得をしたのだろう。「恋愛と泣きがメインで格闘はサブだ」「吉高さんも推している」「勢いのある韓国映画のリメイクだ」などと。護憲リベラル的思想の人々は日本民族主義嫌いから韓国に思い入れをしたがる、エンタメにもマスコミにもそういう人は多い。しかし屈辱的だが日本のエンタメは韓国の一周遅れになってしまった。内々の人間関係、ギャラは高く映像予算は少なく、ジャニーズへの忖度、外から見ればくだらない理由だが内側の人間にとっては苦しく辛い理由が積み重なって遅れてしまった、この映画の主題歌もBTSが歌っている。だがこの「きみの瞳」に関しては様相が少し違う、原作の韓国映画は日本でも上映されたがヒットしなかった作品である。主演男優が主演女優より十歳も年上でしかもオヤジ臭を強調した演技演出がされていた、オヤジが持つ若い女性への性的欲求感が消しきれず、どうしても汚れた印象がのこった、それが日本で失敗した理由だろう。この日本版リメイクではその欠点を逆説的に克服した、横浜より八歳年上の吉高由里子はその優れた演技力を使い横浜をリード、前向きな年上女性に惹かれる若者感を引き出し、全体に清潔な印象を作り出しストーリーをきれいにまとめてくれた、多謝。ストーリーには韓流的な無理筋な展開もある、金を払い映画を見た人たちには当然それを批判する資格がある。だが制作者側が安全安心のストーリー展開でリスクのない仕事をしようとしたらそれは怠惰である。客に刺激を与えるためにはリスクを犯す覚悟が必要だ、だから日本のエンタメは韓国に遅れたのだ。この映画の制作者たちはリスクを犯し、最高のエンタメを作ってくれた、これは男が熱くなれる格闘映画だ。そして横浜は短期で戦える身体を作り上げ、出演してくれたプロ格闘家や超マッチョマンと筋肉のぶつけあいをやらかしてくれた。雑誌のインタビューで格闘シーンの撮影は楽しかったと答えている、本心だろう。今年はコロナに感染し主演舞台を流すという不運に見舞われた彼だが、幸いなことに映画の撮影は昨年行われていた、この映画が公開されたことでよい締めくくりを迎えられるだろう。横浜流星は一つの夢を叶え結果を残した、これで気持ちよく俳優として次の段階に進めるだろう。あるいはあと二年ぐらい俳優を務めたらさらに別の道に進んでもいいのかもしれない。空手のインストラクターになるのもいいが一番いいのはアクションの演技指導になり日本映画の復興に務めることではないだろうか、選択枝はいくつもある。ただ一つだけ強く願う、もし将来生きづらさを感じることがあったとしても三浦春馬のような選択だけはしないでほしいと。

First Order