「死を伴う自己犠牲を美化して、生きていく上でとても重要なことをおざなりにしていないか?」劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
死を伴う自己犠牲を美化して、生きていく上でとても重要なことをおざなりにしていないか?
外崎春雄 監督による2020年製作(117分/PG12)の日本映画、配給:東宝、アニプレックス、劇場公開日:2025年5月9日。その他の公開日:2020年10月16日(日本初公開)
森林や雪の表現などはリアル且つ美しく、実に素晴らしいと思った。主人公炭治郎たち3名のキャラ設定も、まあ悪くない。
しかしながら、鬼殺隊の9名しかいない貴重な柱の一人である煉獄杏寿郎の自らの命を犠牲にしての戦い方には、全く納得が出来ない。大勢の日本の子供たちが見ることを前提にして、知力をおざなりにする害悪的描写と自分には思えた。
確かに、正義と悪が存在するとして、正義がいつも勝つとは限らないことを知ることは、若人にとって重要なことかもしれない。本映画の強敵のいきなりの登場も、予想外だった模様だ。
とは言え、凄い再生力と鍛え抜かれた身体を有する上弦の参であり、勝てる可能性が極めて低いことが判明した猗窩座に、何故何処までも真正面に戦って命を落とすのか?人望も有り鬼殺隊の最重要に近い人間で有り、生き残ることこそが長い鬼との戦いにおいて組織的に最重要でありながら、頭脳を全く使わない戦い方で、相手に何もダメージ無しで勇ましく死んでいくのは、美意識やヒロイズムに酔う、エゴの塊にすぎないと感じた。
前の大戦のことだが、必死に生きながらえて捕虜となって敵軍情報を盗み脱走を何度も仕掛け何処までも敵の弱体化を目指す軍隊と、万歳攻撃でアッサリと全滅する軍隊と、どちらがより本当に真剣に戦っているのか?答えは既に明らかに出ているはずだ。
乗客の命や炭次郎たちの命を守るためという理由づけだが、冷静に見れば猗窩座は少なくとも途中からは煉獄との闘い自体を楽しんでいた様に思われた。鬼が活動出来なくなる夜明けも遠くは無く、闘いの時間さえ引き延ばせば生き残れたはず。そして「お前も鬼にならないか」と誘われもした。相手の性格も踏まえて冷静に作戦を考えて、上手く逃げて追いかけさせて時間を稼ぎ、鬼になる気があるような気配も見せれば、サバイバルのチャンスは十分にあったのでは。究極的に、無駄に命を落とすくらいなら、禰豆子の先例もあるのだから煉獄は鬼となって人間の味方となる選択肢もあり得るのでは?
そもそも鬼殺隊の柱でありながら、なぜ敵の強さに関する情報を、正確に入手できていないのか?何故、柱たちは2人組を基本とする等、チームを組んで強敵に立ち向かわないのか?
実社会で活躍をしていく上で、多分最も肝要な、情報入手とチームプレイ、そして頭脳をフル活用した戦略・戦術の重要性が、この戦いの映画で全く描かれていないのは、非常に残念で、悲しく思えた。
原作が悪いということもあるだろうが、超人気アニメでありながら、こんな杜撰な、勇ましく自分に酔い自己犠牲を美化する様な脚本では、日本は世界ととても戦えないと思ってしまった。脚本制作がunfotableと、責任の所在が明確でないことにも強い不満を覚えた。
監督外崎春雄、原作吾峠呼世晴、脚本制作ufotable、企画岩上敦宏 、大好誠、プロデューサー三宅将典 、高橋祐馬 、藤尾明史、キャラクターデザイン松島晃、サブキャラクターデザイン佐藤美幸 、梶山庸子 、菊池美花、プロップデザイン小山将治コンセプトアート、衛藤功二 矢中勝 、樺澤侑里、絵コンテ三浦貴博 、外崎春雄、演出白井俊行、 竹内將、 細川ヒデキ、 外崎春雄、演出補佐下村晋矢 原田征爾 栖原隆史 恒松圭、総作画監督松島晃、作画監督松島晃 、緒方美枝子 、佐藤哲人 、塩島由佳 、小笠原篤 、田中敦士 、永森雅人 、南野純一 、秋山幸児 、菊池美花 、岡部茜 、岡部葵 、都築萌 、藤原将吾、 石後夏奈、 内村瞳子、 高橋聰 、橋本淳稔 、須藤友徳、原画作監補佐鬼澤佳代、 小林友衣、撮影監督寺尾優一、3D監督西脇一樹、色彩設計、大前祐子、編集神野学、音楽梶浦由記 、椎名豪、主題歌LiSA、制作担当
松本秋乃 、篠原啓吾、制作マネージャー鈴木龍、システムマネージャー笠原健一郎、制作プロデューサー近藤光、アニメーション制作ufotable。
声優
竈門炭治郎花江夏樹、竈門禰豆子鬼頭明里、我妻善逸下野紘、嘴平伊之助松岡禎丞、煉獄杏寿郎日野聡、冨岡義勇櫻井孝宏、宇髄天元小西克幸、胡蝶しのぶ早見沙織、伊黒小芭内鈴村健一、不死川実弥関智一、悲鳴嶼行冥杉田智和、産屋敷耀哉森川智之、産屋敷あまね佐藤利奈、竈門炭十郎三木眞一郎、竈門葵枝桑島法子、竈門茂本渡楓、竈門竹雄大地葉、竈門花子小原好美、竈門六太古賀葵、煉獄槇寿郎小山力也、煉獄瑠火豊口めぐみ、煉獄千寿郎榎木淳弥、煉獄杏寿郎(幼少期)伊瀬茉莉也、魘夢(下弦の壱)平川大輔、猗窩座石田彰、笠間淳
千本木彩花、江口拓也、山村響、広瀬裕也、高橋伸也、秋保佐永子、仲村宗吾、中恵光城。
Kazu Annさま
『教皇選挙』『君たちはどう生きるか』『侍タイムスリッパー』『ラストマイル』に共感、ありがとうございました🙂
★5つの作品だけレビューを書くことにしているので、「無限列車編」はアップしていません。
その理由は、KazuAnnさんのこのレビューの想いと重なります。
もし良ければ、現在公開中の「無限城編」の私のレビューを読んでいただけますか?
レビュー後半で、「無限列車編」の柱・煉獄杏寿郎よりも、「遊郭編」で「何があっても生きろ」と教える柱・宇髄天元について推しています。
10年前の『永遠のゼロ』で始まった特攻VFXエンタメ映画化は、最近の特攻タイムリープ胸キュン恋愛映画へと続いています。
自己を犠牲にして戦って死ぬことが胸熱として描かれる映画から、ティーンやキッズたちが何を感じ何を学んでいるのか、とても気になります🤔

