「日本人の琴線に響く作品」劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 メリー港区さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0日本人の琴線に響く作品

2025年5月17日
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2020年〜2021年にあれほど観たのに、再上映にすでに3回も来てしまった。遊郭編が始まるまでまた来るだろう。
なぜこれほどまでに何回観ても色々と深く考えさせられる作品なのか。

まずはセリフに哲学があるから。帰宅してマンガでセリフを確認すると、やはりほぼそのままである。

煉獄杏寿郎の弟への言動は、泣きたい時に自分より弱い存在を笑顔で励ました経験のある者ならば痛いくらいに分かるだろう。
しかも杏寿郎は弟に一切嘘は付かない。でもお前は俺とは違う、お前には兄がいると励ます。
これは出来そうでなかなか出来ない事なので杏寿郎の思いに毎回考えさせられ、引き込まれる。
なぜ煉獄杏寿郎はこのような生き方になったのかという問いに、ラストは強烈に答えを出す。
かつて日本人の母はこうであった。
上に立つ者とはどうあるべきかという世の中へのメッセージ性も強く、母の言葉は人の生き方を示す。

鬼にならないか? 何度も何度も問われる。
人は人生の中で、鬼への道に落ちそうになる出来事に何度か見舞われる。
人は切羽詰まる時に、言葉は違っても鬼のような生き方に誘われる時がある。
今だけ金だけ自分だけ等の言葉が流行る令和の世の中には、鬼になってしまった者がより競争して強くなる事だけを望んでいる。
一方、死の淵にあっても鬼になれとの誘いを即答で断り、人としての生き方を貫く姿は美しい。
何度観ても、人間とは本来こうあるべきだとのメッセージに打ちのめされる思いになる。

人は現実から目を背けて都合の良い夢を見たいものとのセリフにも、今の日本人には耳が痛い。
幻想の中で生きていると、いつかどん底に突き落とされる。
辛くても炭治郎のように、俺はもう失った!と振り返らずに前に進むしか人として生きる道はない。
何度も何度も夢から覚めるために自分を切るという覚悟に胸を打たれる。

他にもすべてのキャラクターに背景が見えて共感が出来てしまう。映像の素晴らしさはもちろん、音楽が感動を盛り上げる。

でも何よりもこの作品の一番素晴らしいところは日本人が本来持っていた美徳や哲学を思い出させてくれるところだろう。

なので、ここから先は特典が無くとも観る人は観るだろう。不況やインバウンドで旅行は行かないので、今年は鬼滅で楽しもうと思う。

メリー港区
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