「30年後の観客へ」劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)
30年後の観客へ
私が生まれた年の邦画の興行収入ランキング1位は「八甲田山」で25億だそうです。個人的には今でも充分楽しめる作品でした。
だとすればその10倍も稼いだ本作、あるいは「君の名は。」「アナと雪の女王」といった作品たちは、30年後の未来もあなた方を楽しませているのでしょうか。
TV放映でまた観るハメに。
うーん…
申し訳ないがやっぱり面白くはなかった。
ただこれが300億も稼いだ割につまらないという評価は、作り手の問題(も、あるけど)というより観客の問題かも知れない。
シリーズの途中で始まって途中で終わる話で、制作段階ではファン向けに1ヶ月くらい公開、あとはソフトの売上でペイ、みたいなモデル(よくある)を想定していたのかも知れない。
そうでないとTVシリーズから直結で劇場版、という体制は作れないので。
演出や作画などは安定してハイレベルだと思う一方で、とにかく脚本に難がある。
多くの人が指摘する通りセリフやモノローグがクドい。リアルタイムのやり取りとしても冗長だし、終わった話をわざわざあとから言葉で説明するのも理解しがたいものがある。
映像の流れで理解できることをいちいち言葉で説明するので、とにかくモタモタしてかったるい。
脚本はUFO tableとなっているのは、矢立肇みたいに複数人のチームということだろうか。
でもきっとこれは原作をそのまんま律儀にやっているせいではないだろうか。
マンガは言葉の要素が大きいので仕方ないが、映像は流れも動きもあるので言葉がなくても伝わる。それを言葉にするとかえって説明過多になってしまう。
このクドさ、もたつきはおそらく作り手たちもわかった上で敢えてやっているんじゃなかろうか。
ファンの中では原作に忠実かどうかが一つの評価軸になっているような気がする。
映像としての見やすさより、なるべくそのまんま、原作の語りを再現した方が評価も高まるので、たとえ初見の人には見づらくとも、そちらが優先されるのは仕方ないと思う。
「君の名は。」の時にも思ったことだけど、これが30億のヒットというなら、アニメファンすごいな!っていう程度に収まっていたと思う。
ところがこれが日本映画史に残る異次元のヒットとなれば、今後の邦画の制作に長期的なインパクトを与えるかも知れない。