劇場公開日 2021年6月4日

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「感情のぶつかり合いが素晴らしい」はるヲうるひと マルホランドさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0感情のぶつかり合いが素晴らしい

2021年6月14日
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鑑賞方法:映画館

不思議なことになぜかこの映画を見た後、この映画を振り返っている間すがすがしい気分になれた。それはこの映画が綺麗ではなく、忖度なしに役者同士が心の内をさらけ出して真正面からぶつかっているところにあるからだと思う。

内容としてはどす黒く、暴力と嘘にまみれている。一つの島を舞台に売春を生業にしている一つの家がある。佐藤二郎演じる絶対的な権力を持つ長男、その兄におびえて細々と生活する山田孝之と仲里依紗。そして遊女が4人。

この作品は嘘で塗りたくって描いているのがわかる。原発を反対する活動をして金を巻き上げる島民、金のため生活のために客と疑似的な恋愛を行う遊女たちなど、島の美しい外見だけでは想像できないきな臭さが映画を見ていくにつれわかる。

キャスト全員の演技はなくてはならないくらい輝いているが主演の二人の演技がずば抜けており、見ていて感情が引っ張られる。

佐藤二郎は売春に携わる仕事をしているがそんな彼が売春という職業、売春婦に対して言葉にできないほどの憎しみを持っており、一言では言い表せないくらい複雑な役柄だし、場面の絵の使い方が意表を突かせる。例えば古びた家の内装を多めに見せたかと思うと、次では自宅に移り、いきなり近代的な一般の家庭をのぞかせるシーンを入れたのがとても好きだし、その家を見せて「これがまっとうな生活だ」といいながら、そんな家の床に唾を吐きかけるのが彼の屈折した人間性をあぶりだしてとても見事だ。

また本作では生きづらさを抱えた人の心の叫びをこれでもかと痛いくらい感じ取れる一作である。おそらく孝之と仲はともに障害を抱えているように見えたがそんな彼らが自分の脳みそから搾りだすように感情をさらけ出すのはとても見事だし終盤の孝之のナイフを持ちながら二郎に語り掛けるときの表情の出し方は言葉が出ないくらい圧倒される。

生の感情をさらけ出し、綺麗なものを一切出さず観客に対して気持ちをぶつける演技をやるからこそ、この作品は見ているこちらも本気で構えなければ受け止められないくらいの熱量を感じた。

マルホランド