「よく出来たミステリー」ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
よく出来たミステリー
キャプテン・アメリカの純情なおっさんの役と打って変わって、クリス・エヴァンスが金持ちの道楽息子を演じているのが新鮮だ。意外と演技が達者である。ダニエル・クレイグは007が有名だが「ドラゴン・タトゥーの女」や「ローガン・ラッキー」、「マイ・サンシャイン」などの作品ではナイーブな男、豪放磊落な暴れん坊、腰の座った頑固者などの役柄を存分に演じていて、その演技力を高く評価している俳優のひとりだ。本作品で演じたブノワ・ブランという探偵はアガサ・クリスティのエルキュール・ポアロよろしく、名探偵ぶりを遺憾なく発揮する。一方で、ヒューマニストの側面も見せていて、この探偵の人柄が作品に奥行きを齎している。エキセントリックなポアロよりもむしろ鑑賞しやすくなっていると思う。
TVシリーズの「マイアミ・バイス」で活躍したドン・ジョンソンが冴えないおじさんででていたのも隔世の感があり、笑える。看護婦を演じたキューバ出身のアナ・デ・アルマスがある意味本作品の主役であると言ってもよく、正直者のユニークな看護婦をよく演じている。4月公開予定のダニエル・クレイグ主演「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」にも出演が決まっていて、いまから楽しみだ。
序盤の家族ひとりひとりの聞き取りから始まり、サブエピソードである手紙の仕掛けの回収もあったりで、謎解きのミステリー映画としてはとてもわかりやすくて、よく出来ている作品だと思う。