「このツィードスーツ野郎!」ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密 KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
このツィードスーツ野郎!
名探偵たるもの、いつだって英国式スーツでかっちり全身固めなくては。
古典的なネタを新鮮な味付けで華々しく魅せた、楽しいミステリー映画。
美しい衣装を纏った豪華俳優陣、舞台の館の造形と、ビジュアルだけでもワクワクしてしまう。
唐突に観客の目線と立ち位置をガラッと変えてしまう見事な構成に引き摺り込まれ、ハラハラが止まらなかった。
名探偵の推理モノを楽しむつもりで構えていたのに、激しい罪悪感とどうしようもない覚悟を突然突きつけられるんだもの。とんでもない。
エレガントなビジュアルとは裏腹に、佇まいはコミカルでポップな要素が満載。
「嘘をつくと吐く」というトンデモなマルタの設定なんて特に。
その奇妙な体質があるからこそ、彼女の人柄なんだろう。その奇妙な体質があるからこそ、しくじりとも思える行動に納得がいくことも。
クセの強すぎる家族がいちいち面白い。
家族って良いね。家族って素敵だよね。
ハワードにとって家族が家族だったように、家族にとってハワードが家族であれば良かったのにね。
ミステリー好きの若者刑事も可愛くて好きだった。
名探偵たるもの、推理お披露目の場にはたっぷりと勿体ぶり、まどろっこしく演出しなくては。
謎が解かれるに連れ、伏線が軽やかに回収される様のまあ気持ち良いこと。
ただ、爽快感の反面、もう一捻り更に一捻りがあるんじゃないかと若干期待してしまった。
ゲーム好きなミステリー作家なんて、どんなギミックが出てきてもおかしくはないんじゃないかと。いや全然十分面白かったけど。
懐かしい気持ちになりつつ、しっかり現代的なスパイスを感じる鮮やかなミステリー映画だった。
やっぱりミステリーは良いもの。良いものである。実感の一日であった。