「身も蓋もない言い方をすれば…」ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密 Movieアパートさんの映画レビュー(感想・評価)
身も蓋もない言い方をすれば…
非常に 三谷幸喜 っぽい印象の話である笑
最後のジェダイの評判のせいで映画史上トップレベルの悪評が立ってしまったライアンジョンソンの映画で、かつ大ヒットで続編作成決定! という知らせを聞いたので 名誉挽回となっているかな? と、意地悪かつ余計なお世話な目線で鑑賞。
アガサクリスティー風作品を!という明確な心意気の推理モノとしての脚本が作られていると事前に聞いていたのでどんな謎解きが待っているのだろうと思っていると、冒頭いきなり関係者たちの人間関係と状況の説明が全てそのまま事情聴取風の聞き取り説明を通して続くので激しく不安になる。
推理モノは、謎解きをする登場人物が事件の経緯を知っていく過程をどのように進めていくかどうかが観客の興味を持続させる重要ポイントだと思うが(今決めた)、本作の場合、この事情聴取のくだりで関係者達を取り巻く前提情報を全部伝え切ろうとしてるせいで恐ろしくテンポが悪い…
事件の概要と基本的な人間関係ぐらいならまだしも、ミスリードしたいであろう方向性や果ては彼らがこの時点でどんな嘘をついているのかまで、推理に関係する要素を全部詰め込むのはどうなんだろうか。
というか、そもそも普通そういう周辺情報を探偵が見つけ出していく過程が推理モノの大きなカタルシスポイントだと思うのにそれも全て冒頭に推理云々ぬきで詰め込まれているので初っ端から
おいこの映画大丈夫か…
と悪い予感が満載だった。
しかし!
後に
この映画は 犯人の正体 をめぐる話としては進みませんよ!
という方向性の提示がされたので一安心。
正直この映画は探偵物といいながらも推理に割かれる話の時間が圧倒的に少なく、大部分がこの家族の人間関係をめぐるゴタゴタを面白がることに費やされている。
こういう部分が非常に 三谷幸喜っぽいのだ。
あぁそういうことね。と見る目線を変えてからは話の流れにわりと身を任せて楽しめた。
とにかく家族のキャラがみんな立っているand演じる役者達の強力な個性のおかげでこの家族をめぐるゴタゴタが一級品。
あとはメインの舞台となる館の美術の一つ一つのクオリティも素晴らしい。不可思議な小物が非常に多く、自然な というよりあえての 作り物然 とした作りがこの作品によく合っていたと思う。
なんだか全体的に作品の雰囲気が舞台っぽいテイストな気がする。(そういうところも三谷幸喜っぽいと感じた要因かも)
登場人物といえばとにかく色々な意味で重要なアナデアルマス。とにかくひたすら顔がかわいい(タイプ)ということもあり終始応援していたし、勝つべき人が勝つという物語の着地は収まりとしても良い。
が、嘘をつくと吐いちゃうという超乱暴な設定が面白さも生み出しつつもやはり非常に気になる。
ラストの反撃のために入れた設定なのかわからんが、
じゃあ最初にこの人にちゃんと聞いてれば全部解決してたじゃん!
というツッコミは避けられない。
(聞かなかったせいでもう一人死んでるからね)
あと、ラスボスのあいつをめぐる一連の流れが全部結局後出し説明の要素しかなかったのもツボを大きく外している。
とにかく探偵が有能に見えるシーンがほぼないのはやはり大問題だろう。
続編は… 正直この家族の話でないならもう個人的には見る理由はないかな笑