「女優アナデアルマスの覚醒と古典を装った現代的探偵モノ」ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密 マエダさんの映画レビュー(感想・評価)
女優アナデアルマスの覚醒と古典を装った現代的探偵モノ
1.役者
まず本編の真の主役である、女優のアナデアルマスの限界ギリギリまで精神を追い詰められてゆく演技が見事であった。
以前はセクシーなキューバ系の美女というだけの印象だったが、本作で本格的に女優としてレベルが上がったのではないだろうか?
本作を通して彼女のファンになってしまう人も多いだろうと思う。
007の次回作にて、再びダニエルクレイグと今度はボンドガールとして共演を果たすらしいので、これから更に注目を集める女優になるのではないだろうか。
ダニエル・クレイグは最早言うまでもなく、現代のハードボイルド業界を牽引する「顔」でもある。探偵が似合わないわけがない。
かなりできる奴かと思いきや、そうでもないのか?と思わせるところもあり、コミカルなコワモテ探偵といった感じ。
クリスエヴァンスもシニカルでつかみどころのない役だがユーモアにもあふれていていいキャラをしていた。
キャプテンアメリカとは真逆のクズすぎるキャラクターをキャスティングするあたり、なかなか巧妙である。
2. 探偵モノとして
アガサクリスティ的なものを目指したということで、かなり古典的な雰囲気のなか現代的なテンポとユーモアでサクサクとスタイリッシュに進む、丁度いい塩梅。
展開的にはヒッチコック的なサスペンスやサプライズを用いた緊張感の作り方をしていたり、コメディ要素もバッチリでかなり優等生的な作風。
更に移民問題や格差社会などの社会問題も盛り込んでおり、現代のアメリカの病理のようなものが浮かび上がってくる様は、サブテキスト的にもばっちり。
ライアンジョンソンの脚本の力がふんだんに発揮されていたと思う。スターウォーズが嫌いだった人も、食わず嫌いしないで見てほしい。