「典型的なのに斬新、ユニークな設定が効果的なミステリー映画の新たな傑作」ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
典型的なのに斬新、ユニークな設定が効果的なミステリー映画の新たな傑作
著名なミステリー作家ハーラン・スロンビーが自身の85歳を祝う誕生日パーティの翌朝、自室で死んでいるのが発見される。誕生日パーティに参加していたハーランの家族、家政婦、看護師は警察による事情聴取のためハーラン邸に集められるが、そこには謎の人物に雇われた私立探偵ブノワ・ブランの姿があった・・・からのミステリー。
アガサ・クリスティに捧げた脚本だというのも納得のかなり典型的なプロットで古い豪邸が舞台ですが、あくまで現代劇。古臭い風景の中でスマホがブルブル鳴りまくる風景はそれだけでかなりユニーク。そもそもこれは自殺か他殺かというミステリーから始まり、個性が匂い立つ名優達が演じる胡散臭い登場人物達が織りなす丁々発止の腹の探り合い、そこに巻き込まれるウルグアイ出身の看護師マルタもまた誰にも言えない葛藤を抱えているといった複雑なドラマがあちこちにばら撒くパズルのピースがパチンパチンと嵌まっていく終盤の展開がスリリングなのに微笑ましい。
特にユニークなのは看護師マルタは嘘をつくと吐き気を催してしまうという稀有な体質だということ。この設定が見事なアクセントになってサスペンスがより立体的になっているのは巧いなと思いました。クリストファー・プラマー、マイケル・シャノン、トニ・コレット他これ以上ないくらいイイ顔の演技陣がとにかく豪華ですが、特に素晴らしいのはマルタを演じるアナ・デ・アルマス。彼女の慎ましかな美しさと優しさが終始曇天の世界で瑞々しく輝いています。あと画面の至る所に色んなメッセージが仕込んであるのを見つけるのも楽しみの一つ。エンドクレジットにシレッと一つヒントがあったのですが、残念ながらそれは本編中に見つけられませんでしたので、次回鑑賞時に目を皿にして探したいと思います。
とにかく余計な情報は少なければ少ないほど楽しめる作品、ミステリー好きならまず大満足の作品だと思います。