「現代香港のリアル」淪落の人 ローチさんの映画レビュー(感想・評価)
現代香港のリアル
香港の名優、アンソニー・ウォンは雨傘運動支持を表明したため、俳優活動から締め出されていた。そんな彼が、新人監督の低予算映画で、車椅子の枯れた中年男性を演じている。『インファナル・アフェア』の時のような色気は見事に封印し、落ちぶれた男になりきっている。
香港ではフィリピンやインドネシアから出稼ぎでやってきた家政婦を雇うのが一般的で、住み込みで働く彼女たちが休みの日曜日にはダンボールを敷いて広場に集まっている光景は、香港では日常的だそうだ。本作は、そんな香港の今のリアルを写し取っている。
フィリピンからやって来た家政婦に写真家になる夢があると知ると、男は全力で支援しようとする。不器用な2人の心の交流が暖かく描かれている。民主化デモに揺れる香港は、殺伐としたイメージを持たれてしまうが、そういう香港からこのような優しさに溢れた作品が出てきたのは嬉しい限りだ。香港映画の火を絶やさないように頑張ってほしい。
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CBさんのコメント
2020年2月28日
> 雨傘運動支持を表明したため、俳優活動から締め出されていた
そうなんですね。どおりで、上手なはずだ。
雨傘運動はそのままのタイトルの映画を観ましたが、その影響としてそういう不幸もやはりあるのですね。才能を見せられる機会があって本当によかった。