「心もたまには天日干しが必要ですね。」テイクオーバーゾーン グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)
心もたまには天日干しが必要ですね。
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いやぁ、良い映画だなぁ。
見終わった直後、少女の嗚咽の余韻ととともにしばらくその感情に浸ってました。
冷静に振り返ると、この監督は結構厳しいんです。
『もっと強くなる』
中学生の少女に負わせるにしては、あまりにも過酷な状況なのに(もうすぐ弟とも、せっかく心が繋がった雪菜とも別れてしまうというのに)そう言わせます。
しかも最後は、あれほども頼り甲斐のない父親の温もりに縋って、いつ止まるのか分からないほどの嗚咽のままエンドロールに入ります。
言葉にしたら陳腐で白けてしまいそうなこと(例えば、守るべき存在の弟、とか、リレーの仲間との絆とか)は、すべて端折ってます。
走りながらこぼれる微笑、ラストの父親の待つ軽自動車までの少女の視線、車中での嗚咽…。
まったく奇を衒うことのない、ごく普通の映像の繋がりなのに少女の胸の内が、自分のことのように伝わってきて、感極まって泣けてくる。
中学生の部活の話なのに、部室の汗臭さよりも、心の澱(おり)が綺麗に浄化された感じです。まるで、梅雨明け直後に布団も枕もみんなまとめて天日干ししてすっかりカビ臭さや湿気が抜けたように。
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