「愛って何なんだろう?」悪なき殺人 JJJJJさんの映画レビュー(感想・評価)
愛って何なんだろう?
まずオープニングの画が美しく心を奪われる(水色の車が行き交う町を同じく水色のTシャツを着て自転車を走らせるロレックス)。サヌーの住むビルの壁紙はチェック柄で珍しいなーと上映開始早々にしてストーリー外の部分に興味津々。
ストーリーはと言うと序盤から謎が散りばめられていて今後の展開に期待は高まる一方。しかもチャプターが変わる度に謎が増えてきて、自分の予想とその答え合わせをしながらまるで映画と追いかけっこしているように鑑賞。途中、サヌーが出会い系詐欺を成功させるコツをスピリチュアルに真顔でアドバイスするシーンはコントかよと内心笑っていましたが、「偶然には勝てない」という言葉で状況は一転。それ以降まさにその言葉通りになっていき、「脚本にやられた」という感じでした。ミシェルとマリオンのやり取りはお互い「次はどんな一手で来るのか?」という緊張感の高まりを加速させ、チャットというコミュニケーション方法の特性を上手く活かしている。
より個人的な感想になりますが、ミシェルには他人事ではない虚しさを感じた。綺麗な女性と親密な関係になると冷静でいられない心理状況は痛いほどわかる(この場合実際は男なのですが)。ミシェルに限らずどの登場人物にも愛が欠落しているわけですが、じゃあ自分は愛を知っているのか?と自問自答するとコレというモノが体感的になく、自分も彼らと同じなのだなとしみじみ思った。2021年は「これが愛なのかな?」と思える日が来ることを夢見るのでした。
最後に余談的な感想ですが、マリオンとエヴリーヌが身体を重ねるシーンはエロを通り越して美しく感じました。ミステリーを楽しむだけでなく様々な気付きを得られた映画体験となりました。