「個々の瞬間に写る見えなかった闇、辻褄が合ったときの恐ろしさは必見」悪なき殺人 たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
個々の瞬間に写る見えなかった闇、辻褄が合ったときの恐ろしさは必見
これが噂の「羅生門」スタイル…。進む度に辻褄が合ってきて、繋がる度に怖くなってしまった。なぜなら全て"偶然"なのだから。
フランスとアフリカ、浮気と百合、そして、殺人と失踪…。幾重に散らばったピースがブワッと繋がっていくときの気味悪さが何とも堪らない。それぞれに抱えられた影の部分が一人の視点で動く時、そのベールが脱げていく。序盤はどうしても虫食いのようなプロローグになるため、引き込まれにくいのだが、そこを潜るとあまりにも恐ろしいモノが見えてくる。
この作品の素晴らしい所は、フランス語圏の物語にあると思う。一見繋がるはずのないアフリカで、フランス語が言語の1つとして使われていることが鍵を握る。単なる事件ではないことを悟った時、思わず溜め息をついてしまった…。ページをめくる事をやめてしまいたくなるような伏線の回収に衝撃。それ以上に突きつけられた作品のテーマがあまりにも重くて苦しい。そして何より、「人間は、『偶然』には勝てないー」のコピーが全てを形容している。邦題も凄く作品を捉えていて余韻に一役買っている。
邦画ばかり観ているので、こういう出会いが出来るのは本当に嬉しい。かなりオススメしたい1本。
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