劇場公開日 2021年1月16日

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「幾多の屍の上に」ジャスト6.5 闘いの証 MARさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5幾多の屍の上に

2021年1月25日
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興奮

麻薬が蔓延するイランにて、売人・ディーラーを追う麻薬撲滅警察のチームを描いた作品。

主人公の刑事、サマドは街からの麻薬撲滅を目標に、容赦ない物言いで悪人や関係者を問い詰めていく。チームの皆も、そんなサマドに手を焼きながらも共に奮闘していく。

初っ端から衝撃的な逃走劇を見せたかと思えば、おびただしい数のホームレス達が暮らす土管街(⁉)での一斉検挙、そして末端の売人を辿ってナセルを追っていき、ついに…。

と、ここまでで既に濃ゆい内容だが、まだまだ序章。

ナセルの牢獄内での強かな行動や、サマドとの危険な駆け引きに息をつかせぬ展開。
さらに一枚岩とはいかない刑事チームの軋轢。ナセル側も同様、弱った悪は仲間を売り合うしかない。
敵も味方も一癖二癖あり、ついでに頭がキレるもんだから感情的に見えて、うまい事お互いを口撃し追い詰め合う。

ひとつひとつのやり取りに緊張感と高揚感があり、次の展開がとにかく気になってハラハラが止まらない2時間強だった。

そして、シンプルとも言えるが、やはり諸悪の根源が断たれない理由はそこにあるか…。
とは言えナセルの選択は間違いなく許されるものではない。

それでも、正義のはずの刑事チームがエグく見え、絶対悪のはずのナセルに危うく感情移入しかけそうになる見せ方は本当に上手い。

終盤、いきなり夜のシーンになり、何をブランブランさせてるのかと思ったら…そういうことか。
ここからの展開は怖くて震え上がるほど。映画でこんな絶望感初めてだ。

最後に、ジャスト6.5…ずっとタイトルの意味は何だろうと考えていたけど、成る程そういうことね。
無くならない悪行と残された人々、家族を想う重犯罪者もいれば、息子に罪を被せる輩も…
何ともやりきれない思いにさせられた作品だった。

世界的に見れば治安が良いハズの日本にも…入り込んでいるのか。。

MAR