「原作再現はおめでとう!ほぼフルスコアよ!」約束のネバーランド てらゆうさんの映画レビュー(感想・評価)
原作再現はおめでとう!ほぼフルスコアよ!
連載1話から原作を見ていた者ですが、世界観やキャラクターの再現が素晴らしかった!
なんと言っても北川景子。
この脱獄編はイザベラから漂う「ラスボス感」が魅力の大部分を占めているのだが、実写でもあの怖さがしっかりと表現できてる!
「優しさの中に隠れた狂気」
「怖さの中に潜んだ慈愛」
それらを表情の作り方や声色等で見事に表現してみせた、圧巻の演技力でした!
クローネ役の渡辺直美に関してはキャスティングの時点で成功だと思っていましたが、やはり期待通りの働きでした。
感情豊かでコミカルな人気キャラをそのまま演じてくれていて、中盤まで原作通りに盛り上げてくれました。
笑顔溢れるエマを演じた浜辺美波も勿論良かったですし、それ以上に良かったのはノーマン役の子。
顔も似てますし、常に冷静で落ち着いた声色も、優しさやここぞという時の頑固さも全て自然な演技で、本当にノーマンに見えましたよ。
脱獄編は裏主人公的にノーマンが活躍するからこそ、このノーマンの演技力がそのまま映画の価値に直結すると言っても過言ではありません。
映画の完成度を高めた見事な演技だったと思います。
以上のようにキャストが本当に素晴らしかったので、他のレビューでもある通りレイ役が悪目立ちしてしまったのは否めません。
それでもお釣りが来るぐらい皆の演技力が良かったです。
ストーリーも本当に原作に忠実で、台詞や演出も原作流用ばかりだったのが好印象でした。
脱獄編は元々完成度の高い話ですし、細かい台詞にキャラの魅力が詰まってたりするので、原作通りに使ってくれたのは嬉しかったです。
終盤ホントに一点だけ、個人的に凄く残念だった改変がありました。
脱獄成功を見届けるイザベラのシーンです。
原作ではイザベラは脱獄する子供達の後ろ姿しか見ることができず、言葉を交わさず別れます。
イザベラの子供達に対する愛情は本物、でも子供達にとってそれは生贄を前提とした歪んだ形。
その双方の隔たりがあるからこそ、無言で別れる儚さが良いわけです。
そしてそれでも愛情は本物だからこそイザベラは過去の自分と決着をつけ、エマ達のために脱獄の痕跡を隠し、フィルにエマの成功を教え、子守唄を歌いながら無事を願うわけです。
このイザベラの過去と愛情について描かれる一連のシーンは、私が原作の中で一番好きなシーンです。
映画では最後エマがイザベラを説き伏せるシーンがありましたが、他人に説き伏せられるようではイザベラの過去の決意とか愛の深さとかが全部薄まっちゃうように思うんですよね。
あのシーンは無言で別れ、イザベラが自分で自分の過去とケリをつけるからこその名シーンだと思っています。
この改変は残念でした。
ただノーマンの出荷時、ラートリーとの追加改変シーンは良かったですね。
脱獄編では語りきれない部分を上手く補完した内容になっていて、映画1本で完結させるために必要な良いシーンだったと思います。
全体を通して原作再現度が高く、「いやー、やっぱり脱獄編は面白いなぁ!」と改めて感じられた良い実写映画化でした。