「見せない事の怖さを学んでください。」約束のネバーランド Mさんの映画レビュー(感想・評価)
見せない事の怖さを学んでください。
よくある敷地内もの、閉ざされた塀の中の箱庭もの。
シャマラン監督の「ビレッジ」を連想したが、、
この監督も、シャマランや、スピルバーグのように見せない事の怖さ、
想像させる事の怖さ、を学んで欲しい。
とにかく全編にわたり、見せてしまうことの品の無さ…で貫かれている…。
この監督には、しょぼいCGの化け物の全貌を冒頭からみせることに躊躇いや恥ずかしさは感じないのだろうか。
しかも、せっかく夜なのに、鬼が現れる門には白熱球のライトが煌々と灯っており、スピルバーグ的な白熱球が揺れて、見えたり暗くなったり…あるいは、割れて暗くなり…というような見せない演出は一切ない…
ストーリー展開も冒頭から全てを見せてしまう…。
卒業する女の子がトラックで遺体としてみつかり、鬼が姿を現し、ママと孤児院の秘密を知る主人公と観客…。しかも、主人公達が落としたぬいぐるみからママも子供たちに秘密が知った者がいると疑念を抱く…。
これももいかがなものか…。
主人公たちも、冒頭から断片しか見ないことで、悪い想像をし、恐怖を抱き、ママや孤児院への疑念を初めて持ち、それが仲間同士の対立や衝突を産み、、疑念は深まり、ミステリーを産み、ママと孤児院のシステムの秘密が解き明かされ、
ママとの対立のサスペンス、そこから裏で脱走する計画を練り、
そしてついにクライマックスに鬼や壁の全貌が明かされる。
そして、いかにママを出し抜くか、脱走するか、
どんでん返し的なカタルシスで完結する…
と、言葉で整理すれば簡単だが、、
プロットの組み立てや、見せ方の順番が全く整理されていない。それは冒頭から全て見せてしまう事の失敗により、サスペンスの要素もミステリーの要素も機能しなくなったからだ…。
そもそも、演出や設定の詰めの甘さ、や矛盾が気になりすぎる…
▪️冒頭、ぬいぐるみ忘れたから届けよう…そんな大切なぬいぐるみを忘れるか?物語の発端の出来事として、演出がすごく雑だし、芸がない…
▪️簡単に門に行けちゃうのに今まで誰も秘密をみなかったのか?
そもそも、門での儀式にはママも行くのだから、子供たちの管理が疎かすぎないか?
シャマラン的な「夜は絶対に出てはならない」「柵の外から出てはならない」のルールの弱さ、、それを破る時の躊躇いの無さ、どれだけ重大なルールか…全くハラハラしない…
▪️冒頭、浜辺美波は、大切な妹を失ったショック、ママが裏切っていたことのショックらこの世界の秘密のショックから簡単に立ち直れないはず。
まず普通は簡単に受け入れられない。
けど、次の日には仲間たちと脱出計画を練り、楽しげに「脱出しちゃおー」とあっけらかんと笑う。
どういう感情なんだろうか…
これも、全て冒頭から見せてしまう事のミスが要因で、人物の感情が展開に追いつかなくなる。
▪️3人は脱出計画を練るが、よくも堂々と孤児院内で演劇調で話せるものだ。
まるでママに逆GPSが付いてるかのように。
GPSをつけてるくらいだから、盗聴器もあるかも、
きっと地獄耳のママだから秘密は筒抜けになる…
警戒心ゼロで何度も脱出脱出と口にする3人…
▪️ママの管理意識の低さ…
GPSチップだけでは追跡はできても制御が全くできない。子供たちは好き勝手やる。枷が弱すぎる…
主人公たちも、途中、何度か柵を超えてるのもGPSでバレてるはずだし…
▪️最後のハンガーロープ、こちらの塀側のロープはいつの間に、どこに結んで固定したのか…
▪️渡辺直美は存在だけで怖い。ビジュアル的に。むしろ無表情、無感情の方が怖い。
それをコント番組ばりのオーバー演出をしてしまう…
彼女に求めたら、いくらでもやってくれると思う。エンターテイナーだから。それで監督も楽しくなっちゃったのか…やり過ぎたら、ダメだ。
羅列すればキリが無い演出不足…細かい事だが、ものすごく大事な事ばかりを無視するので、
この監督の演出、生理的に無理…というレベルだった。