フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊のレビュー・感想・評価
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字幕には不向きな情報量、配信向けかも
宣伝文を見ると、編集長が亡くなり廃刊が決まった雑誌編集部の群像劇のようなイメージだが、実際はその設定は包み紙のようなものだ。中には入れ子構造のように架空の街を紹介するレポートと、芸術・革命・美食に事寄せた3つの物語が入っている。編集部内部の物語はほぼなく、構成自体が完全に雑誌最終号を順繰りにめくっていく体裁だ。
そして、3つの物語が語られる最中に、それぞれの話の中で時間が頻繁に前後し、数年後に話が飛んだり、さらに劇中劇があったりする。台詞が多いのでただでさえ字幕の情報量が多いところに、画面が二分割されてそれぞれの描写に説明がついたりする。
わんこそば状態で全体の物語構造と、各話ごとにその都度一から登場人物や設定を把握していく必要があり、それぞれ複雑な話ではないが早いテンポで進むので忙しい。見ているとなかなか愉快なシーンもあって、ここは笑うところなんだなと頭では思うのだが、正直あまり笑う余裕がなかった。退屈ではなく、脳の疲労によって眠気が差す瞬間があった。字幕に頼らなくてすむ英語のヒアリング力があれば、感想自体が変わってきそうだ。
さまざまな話が終盤で集約されることを少し期待したが、それもなかった。
楽しめる人を選ぶ映画、そして楽しめなかったと言いづらい類の映画だと感じた。通には分かる的空気感というか……。
それとアンダーソン監督の作品は初めて見たが、お気に入り俳優を毎回のように使うことや、自分の好みと小ネタを詰め込む傾向はアメリカ版三谷幸喜か?と思った(好きな人には雑な括りでしょう、すみません)。
映像はさまざまな表現方法を駆使していて、色合いも構図もいちいちお洒落。ストップモーション(スチールではなくだるまさんがころんだ状態の)、画面分割、モノクロとカラーの交錯、舞台的演出、クライマックスでのアニメーションなどなど。凝った絵本を読むような楽しさがある。
俳優も豪華。目で楽しむと割り切れば、結構お腹いっぱいになれる。全体を通して、監督の表面的ではないフランス愛も感じた。愛ゆえにおちょくってるところも含めて。そういったところはよかった。
ただ、個人的には疲れさせる作品という印象が先に立った。
配信されて、気になるシーンで一時停止しながら見られる環境になれば、もう少し評価が上がるかも知れない。あるいは、吹替の方が情報量をフォロー出来るかも。
ウェス・アンダーソン映画にはまだまだ伸びしろがあった。
どこを切ってもウェス・アンダーソンの映画をウェス・アンダーソンは作ってきたし、精緻な一点物の工芸品のような輝きを放ってきたのだと思う。しかし、そのクラフトマンシップが行き過ぎると、エモーショナルな面で入り込みづらくなる、という感覚を時折感じてきた。これはもう、どこまでウェス・アンダーソン的世界にシンクロできるかという適性の問題であり、そもそもウェス・アンダーソン的世界は揺るぎなく存在するのであって、そこに観る側が勝手にエモーションを仮託できるかどうかで、それぞれにとってのウェス・アンダーソン映画ランキングが決まるとも言える。
で、『フレンチ・ディスパッチ』はというと、もうこれまで以上にゴリゴリに、ウェス・アンダーソン的世界が追求されていて驚いた。あれだけ好き放題に作ってるように見えたのに、まだまだウェス・アンダーソンには探求したいウェス・アンダーソン的世界が残っていたのだ。もう正直自分にはついていけなかったと告白するしかないのだが、それでもこの箱庭的世界の緻密さには驚異を感じるし、強烈にハマる人もいるはずで、おそらく彼のフィルモグラフィの中でも突出してカルト化するのではないか。
さりとて個人的には感情的な部分でももっとブチ上がれるウェス・アンダーソン映画も作って欲しいと願い続けていますが。個人的には6勝2敗1分なので、まだまだ期待していますよ。
古き良き雑誌文化を懐かしむ。ウェス・アンダーソン作品にしては間口がやや狭いか
ウェス・アンダーソン監督のトレードマークと言える、少々偏った純粋さを備えた個性的なキャラクターたち(俳優陣も常連率高し)、箱庭のような印象を与える徹底的に作りこんだセットは健在。今作ではフランスの架空の街にある、架空の雑誌編集部をメインの舞台にしたことで、さらに増した“作り物感”がファンを楽しませるだろう。
ウェス監督(アンダーソン姓の監督が多いのでこう呼びます)の過去作はほぼすべて「大好き!」と言えるのだが、この新作に限っては心の底から楽しめないというか、どこか自分とは縁遠い世界の話のように思えてしまった。もちろん過去のウェス監督作はたいてい別世界の架空の話なのだが、それでも物語のキャラクターへ容易に感情移入し、世界観にも共感できた。
たぶん今作にそのような違いを感じたのは、描かれている古き良き時代の雑誌文化、編集者たちの仕事ぶりや記事にまつわるエピソードの数々が、当代のハイカルチャーを発信する媒体として雑誌が有効に機能し、出版社にも経営的に余裕があった頃を懐古するような心持ち、そしてそこから醸し出されるインテリっぽさ、エリートっぽさが引っかかったからかもしれない。古き良き時代を懐かしむ余裕のある層を喜ばせる一方で、そうではない庶民を元気にしたり勇気を与えるような魅力が薄れてしまったように思うのだ。
観客の年齢層で言っても、ウェス監督の過去作は大人から若者、子供まで幅広い世代から共感を得られるような普遍的な面白さがあったが、この新作を心から楽しめる世代はだいぶ狭くなるのではなかろうか。
見ているだけで笑顔になる。触れてるだけで幸せになる。
子供の頃、購入したての絵本や雑誌を包から取り出し、ドキドキしながら1ページ目をめくった時の”あの感じ”。印刷液の独特の匂い、おもちゃ箱をひっくり返したみたいなビジュアル、そして個性あふれる書き手の筆致までもが、目の前にありありと迫ってくるかのようだ。これはウェス・アンダーソンから雑誌文化やフランス文化へ向けたラブレター。と言っても、やっぱりアンダーソンのことなので、発想のアウトプットは一筋縄ではいかない。彼が青年期に刺激を受けた「ニューヨーカー」誌が発想の源になっているそうだが、そこにヌーヴェル・ヴァーグや仏ノワール映画を掛け合わせ、色とりどりのショートストーリー形式で展開する様は、雑誌特有の「どこでもお好きな箇所からお読みください」的であり、一品一品に心を尽くしたフルコース的でもあり。それでいてなぜか「異邦人」「芸術」「死」という要素がうっすら余韻を漂わせる後味にも惹かれるものがあった。
監督作10作目記念にふさわしい!見るべき所が多い贅沢な作品
ウェス・アンダーソン監督の記念すべき10作目となる本作。物語の舞台は、20世紀フランスの架空の街にある「フレンチ・ディスパッチ」誌の編集部。
どんな映画なのか全く想像できないまま鑑賞していたが、フランスらしい色使いの建物や風景、足下まで気になる緻密な衣装、ユーモア溢れる考え尽くされたストーリーに驚かされた。
冒頭で表れる、編集部ごと一軒家をシェアしながら働いているような表面的な画角の描写は、本作を高級料理店コースに例えると食前酒を詳しく説明しているような場面。序盤から感覚がポッと温かくなり、この先何が出てくるのかワクワクさせるような前振り。その後は、編集部員が追う3人の登場で一気に視野が広がっていき、3つのストーリーが同時進行。食前酒の後、3枚のメインディッシュが目の前に出てきてたような状態で、各々の皿を一枚一枚一口ずつ吸収しないと貴重な食事の味(ストーリーの醍醐味)がわからなくなるのでそれは避けたいところ。
その3人とは「服役中の天才画家(ベニチオ・デル・トロ)」「学生運動のリーダー(ティモシー・シャラメ)」「警察署長の美食家(マチュー・アマルリック)」。彼らの奇想天外な状況と言動が1つの記事にまとまるように思えないところがまた面白いので、キーとなる3人は顔と肩書きだけでも押さえておくのがいいのかもしれない。
本作そのものが、一冊の(架空の)雑誌「フレンチ・ディスパッチ」であり、ここには個性豊かなプロが集まる編集部と、各々の記事の要となる様々な人物の背景が詰まっており、最後は見事な最終ページで完成されている。
どこか懐かしいホッとするような画像が終始表れ、耳ではスピード感がありながらも淡々と聴こえる語り。この視覚と聴覚の響きは、豪華なキャストに引けを取らない監督のセンスが感じられる。
もしも、衣装や背景にこだわりの強い本作のカットを集めた画集があるのなら、見て堪能するだけでなく、あえて切り抜いて絵葉書にしたり、切り貼りして手紙の封筒にしたくなるくらい「人に見せたくなるセンスに溢れた色使い」なので、映画ファンに限らず、建物やインテリア、ファッション、色彩に興味がある方にもチェックしていただきたい作品。
Anderson Flexes Artistic Freedom like It's Made for Netflix
A well-crafted opening of a magazine printing press immediately strikes the heart with warming charm. The introduction to the fictional French town is funny and I was looking forward to the next two hours. Actually three short films—the first is brilliant exploration of art that could have been written by Brad Troemel and plays like a comedic Sin City. The following two shorts aren't as engaging.
捉えどころ
邦題なっが
長編10作目‼️
またまたウェス・アンダーソン監督の趣味がバクハツした作品‼️大人気雑誌「フレンチ・ディスパッチ」の編集長が急死。遺言によって廃刊が決定、最終号に向けて一つのレポートと3つの物語が掲載されることになるが・・・‼️編集部があるアンニュイ=シュール=ブラゼの街を記者が紹介する「自転車レポート」‼️服役中の画家とモデルの看守、画商のエピソード「確固たる(コンクリートの)名作」‼️学生運動のリーダーと会計係の学生の恋愛エピソード「宣言書の改定」‼️誘拐事件まで発生する警察署長とお抱え運転手のエピソード「警察署長の食事室」‼️それぞれのエピソードをオムニバス形式で描き、凄すぎるオールスターキャスト、モノクロとカラー、独創的な美術、アニメーションまで挿入して描いた作品‼️どのエピソードもアンダーソン監督一流の皮肉と毒っ気とユーモアにあふれていて印象深い‼️でもレア・セドゥはよく看守の役を引き受けたましたよね⁉️いろんな意味で‼️よほどアンダーソン監督を信頼してるのでしょう‼️長編10作目ともなるとアンダーソン監督も作風が確立してきたようにも思えるのですが、ちょっと作風がマニアックになってきてるのが気になる‼️私的には、デビュー作の「天才マックスの世界」が最高傑作ですね‼️
豪華な演者たちと文化の違い
正直、観ていてよく分かりませんでした。英語とフランス語の混ざり具合、英語発音が早すぎて聞き取りづらいところも多々あったりとかセリフと字幕のズレとかで追いかけるのが精一杯だし、向こうのギャグセンスと日本人としての受容度の差とかいろいろと痛感しました。そのへんは覚悟した方がいいかも。ただ、構成の体裁は理解できます。なんでもありの雑誌記事を映像にしてみた。です。そこを観ていて「どん底作家の人生に幸あれ!」みたいだなあと感じましたが、どん底ほど分かりやすい話ではなかったかなあ。。。
大雑把なストーリーしか頭に入れてない状態で鑑賞しましたが、すごい役者ばかり出てきてびっくりしました。実に豪華なキャスティング。逆にこういう映画だからこそこんな役者ばかり起用できたんだろうなと。特にウィレム・デフォーの無駄遣いには笑いました。
美術館に来てるみたいな映画
この作品がアメリカ映画でありアメリカ人監督によって作られたことに驚愕‼️😓
極上のミニマムでマキシマムな世界を、お毒味する。
なんとも奇妙で楽しいコメディな映画でした。
《フレンチ•ウソッパッチ?!》
フランスのアンニュイ(もちろん架空の町)にある総合芸術誌
「フレンチ・ディスパッチ」との創刊者で編集長のビル・マーレーが急死した。
その遺言で廃刊。
編集長の追悼誌である最終号を出すことになる。
その4つの記事をショートストーリーとして描いたオムニバス形式の映画です。
モノクロ有り、カラー有り、アニメ有りの賑やかな画面。
画面サイズはほぼ正方形に近いです。
第一話のベニチオ・デル・トロの胡散臭さに、両手を挙げて平伏しました。
そしてなんとモデル(すっぽんぽんミロのヴィーナス)
にして看守のレア・セドゥ。
破壊的な可愛らしさ美しさ。
今までレア・セドゥを《ボンヤリした輪郭の掴みどころのない美女》
そうずっと、いぶかっておりましたが、今回この映画を観て、訂正させて頂きます。
国宝級の美女にしてコメディエンヌ。
他に比類のない極上の女優(いっぺんに、普通→最高)に格上げされました。
(看守の制服の可愛かったこと。)
(むすっとした表情、なんとも例えようのない不思議な存在感、)
(こりゃあ、何色にでも染まる天然素材やわ)
ウェス・アンダーソン監督(53歳)
「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」=困惑した。
「グランド・ブタペスト・ホテル」=凄いことは分かった。
そして、
「犬ヶ島」
これは日本が舞台のストップモーション・アニメSFコメディ。
(この映画が1番楽しめたのでした)
「フレンチ・ディスパッチ・・・」以下省略。
兎も角、独創的。
大人が楽しむ秘密結社的な世界観。
観客は皆、観察者にして共犯者。
毒がなんとも楽しいです。
デル・トロとレア・セドゥの2話。
美術商のエイドリアン・ブロディが殺人罪で服役中の凶悪犯
ベニチオ・デル・トロの絵画芸術に価値を見出して、一儲けしようと
画策するのだが、その絵画はなんと●▽◎◎●◆◎?!なところ
(剥がすにも剥がせない場所)に描かれていた。
独創的だ!!
デル・トロの唸り声とか、ヒゲモジャ困り顔の殺人犯が
本物の殺人犯に見えるので、リアル素敵である。
3話のティモシー・シャラメ君の学生運動のリーダーと、
変な関係のジャーナリスト・フランシス・マクドーマンド。
この映画がとても気に入ったのは、毒が多かった点です。
「毒殺」
「誘拐」
「感電死」
ミニマムでマキシマムな世界に、
「悪」と「毒」の要素は、とても合います。
なかなか結構な隠し味でした。
独特…ですね
傑作ですね。
フレンチ・ディスパッチ(新聞の日曜版別冊)最終巻の記事を映像化したというつくりの映画。
個性ある記者の面白い各記事がエピソードとしてオムニバス的に映像化されるとともに、この雑誌そのものの編集風景、編集長の死(遺言により最終刊行となっている)が底流として描かれるという凝った造り。
各エピソードがいつものウェス・アンダーソン風短編映画としてとても面白いし、挿入されている編集長(ビル・マーレイ)の人柄、編集方針や編集の過程の描写もとても素晴らしく、各エピソード(記事)の舞台裏がわかるとともに、複数のエピソードを有機的にリンクする役目を果たしている。
驚くような豪華キャスト。え、彼はこれだけしか出てこないの?みたいな。
完成度の高い傑作です。
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