「パンフレットに至るまで計算し尽くされた一作。」フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
パンフレットに至るまで計算し尽くされた一作。
ウェス・アンダーソンの美的感覚とフランス映画(っぽさ)が融合するとこんな映画ができるのか、という驚きに満ちた一作。舞台となる街の名前からも分かるように、アンダーソン監督が描く「フランスっぽさ」は徹底的に意図的かつ戯画化されたものなので、そこは評価の対象にはならないはずなんだけど、観ているこちら側は、自分が持っている「フランス映画ってこんな感じだよね」っていう先入観を見透かされたような気がして、ちょっと居心地が悪くなることも。
作中のエピソードはどれも面白いんだけど、オムニバス形式なのかというとそれともちょっと違っていて、この不思議な構成は何?と思っていたところ、作品全体が「フレンチ・ディスパッチ」誌の見立てで、それぞれのエピソードは誌面を飾っている記事として描いている、という意図を知り、それでようやく先の不思議な感覚を理解することができました。
シンメトリーの構図と緑と黄色が印象的な淡い色調に統一された映像は、最高に形式的で最高に美しいものの、一歩間違えれば(イメージされた)フランス映画のまねごとに見えそうなところ、徹底的に計算された画面構成で、その陳腐さを紙一重で躱しているとしか言いようのない名人芸はさすがのひとこと。
ほとんど台詞のない役どころまで超豪華キャストのため、しばしば目移りしてしまいますが、どの俳優も楽しそうに生き生きと演じているところが非常に印象的。
そして作品の延長線、というか内容を凝縮したようなパンフレットは、内容も豊富で読み応え十分のため、購入を強くおすすめ!
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