「細部を確認するため、もう一度見たい。」フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊 Boncompagno da Tacaocaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5細部を確認するため、もう一度見たい。

2022年2月5日
iPhoneアプリから投稿

インテリ好みのパロディと遊びに満ちた映画である。同じ監督の「グランド・ブダペスト・ホテル」のように、色々な仕掛けで見る者を飽きさせないが、ボーっとしていると、細部の工夫を見落としそうで、なかなか忙しい映画である。だから細部を確認するために、もう一度見たい。ストーリーも架空の雑誌の読みもの数篇という入れ子構造になっているが、実在の『ニューヨーカー』のような味わいがある法螺話という感じ。服役中の刑務所で絵を描く画家とか、奇妙な設定が多い。学生運動のパロディのような話は、学生運動家の生硬な意味があるようでない語り口を面白く表現しているが、あの時代のフランス映画の女優のような小悪魔的な娘を登場させていて、楽しめる。刑務所のシェフの話も、どこか昔のフランス映画のテイストもありながら、実写とアニメが混合する自由な作り。この映画を作った人の頭はどうなっているかと思う。これは褒め言葉である。雑誌と映画とフランスへのオマージュも感じた。

Boncompagno da Tacaoca