「雰囲気のいいバルでおしゃれなアペタイザーをつまむ感じ」フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊 豆腐小僧さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0雰囲気のいいバルでおしゃれなアペタイザーをつまむ感じ

2022年2月1日
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鑑賞方法:映画館

サロン音楽(ミュージック)というジャンルをご存知だろうか?古くはクラシックの世界で貴族が主宰するサロンにおける社交の装飾的存在の音楽の事。今日この名称は、サロンで味わうような、上品で小ぎれいな軽音楽の意味で使われることが多い。そして本作の味わいはまさにそんな感じかなと思う。

急逝した編集長の追悼にして廃刊最終号を彩る記者たちのコラムをオムニバスにハイセンスな映像で見せてゆくのが本作である。とにかく映像の構図は全てにおいて計算され凝りに凝っており、会話の端々に至るまでセンスを張り巡らしている。うむ、確かに意識高い系の人には受けそうだw

もう少しくだけた感じで印象を語れば、雰囲気のいいバルで、ワイン片手におしゃれなアペタイザーの数々をつまむように楽しむべき作品だなのだ。だからこの映画には、決し食べ応えのあるメインディッシュは存在しない。それは求めても出てはこないのだ。その雰囲気を楽しめれば良いが、悪く言うと山場は存在しないので全体として淡々かつ一本調子感は否めない。だから心に余裕がある時に観ないと眠くなる人もいるだろう。

これがウェス・アンダーソン監督の10作目となるらしいが、僕は「ダージリン急行」「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」「グランド・ブダペスト・ホテル」の3作くらいしか観ていない。まぁどれもセンスのいい作品だったからその集大成とも言えるべき作品なのかな。「犬ヶ島」公開時に次はストップモーションの手法で人を使うアイデアがあったと言っていたらしいので、逆に「犬ヶ島」をあらため観てみようと思う。これから本作を観る方で「犬ヶ島」を観ていない人は、先に「犬ヶ島」を観てから対比してみるのも面白いかもしれませんね。

豆腐小僧