「ウェスアンダーソン世界観の新境地」フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊 とうろうさんの映画レビュー(感想・評価)
ウェスアンダーソン世界観の新境地
ウェスアンダーソン監督、大好きです
オスカーを取ったグランドブダペストホテルにも見られるように病的なまでに徹底したシンメトリー風構成(配置物で左右の対比をつけてるので「風」とします)、同系統の色調のみで固めた一画面の調整、それらからなるどこを切り取っても絵画として成立しそうな圧倒的ビジュアル、映画としても好きですが映像芸術として何度見返したことか
今回もそのウェス節満載の画面が108分余す事なく続きます
その中でも特に私が好きなのは色合いなのですが今作はモノクロのシーンが多く続きます
色合いが無い点は残念に思いましたがモノクロでも美しく見せる辺りは流石です
そしてカラーとモノクロの使い分けは最初語り部の視点から見て過去がモノクロ、現在がカラーなのかと思っていましたが若干違うようですね
プロローグでも現在と過去で色が逆になっている部分がありましたし、語り部から見てインパクトのあった瞬間は鮮明に記憶が残っているので一部カラーになるといった所でしょうか
更に途中にアニメーションもいれてあらゆる技法でウェスの理想の街を表現していきます
全てが美しく住みたくはないけど観光に行ってみたい街と思わされます
どうせなら犬ヶ島やMr.FOXで使ったようなストップモーションアニメも使ってみて欲しかったですが
さてビジュアル面の話はそれぐらいでストーリーについては現代の雑誌編集部からスタートします
フレンチディスパッチザリバディカンザスイヴニングサン別冊という雑誌を4人の記者がページを振り分けられて記事を書いて作り上げます
1人目はプロローグ程度の量なので実質3部のオムニバスのような形です
で、テーマの違う記事を映像にして説明するという物です
一部は絵画の天才の囚人の話
二部は学生闘争の話(1番難解です)
三部は警察と人質の話に食べ物の話
個人的には一部の話が一番好きでした
相変わらずレアセドゥが美しい
全体的に記事という体なのでインテリチックに話が進んでいきます
それぞれ下地のテーマへの知識が0だと全く理解できない可能性もあります
インテリの中にもクスッと笑えるコメディ的要素もありまるで現実の記事だったのではと思わされます
まあ理解できなくても観る映像芸術だと思えば十分満足できるかと思います
私自身二部はあまり理解できませんでした
それぞれの話に繋がりがあるわけでもないので一冊の雑誌を通して読んでいる感覚に陥ります
グランドブダペストホテルは絵本を読んでいるような感覚でしたし彼にしか表現できない文学的世界観ですね
トータルしてウェスの世界観が好きであれば今作も間違いない作品だと思います