「まるで仕掛け絵本のような遊び心満載の画面に釘付け」フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊 ヨシヒロさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0まるで仕掛け絵本のような遊び心満載の画面に釘付け

2022年2月1日
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架空の街の架空の雑誌「フレンチ・ディスパッチ」で巻き起こる騒動を描いたこの作品。
基本的な構成は、本物の雑誌と同じようなそれぞれの記者が書いてきた記事がひとつのストーリーを形成する形になっている。
幅広いカルチャーを扱うディスパッチ誌。この映画は美術ネタ+政治ネタ+グルメネタ+プロローグ+エピローグの計5章で構成されている。

特に最初の美術ネタのチャプターがかなり印象的だった。
そのチャプターでは刑務所の中の芸術家の奇妙な美術史が語られる。
美術の英才教育を受けたはずなのに親に反抗して犯罪の道に堕ちていった天才的な芸術家が、刑務所の中でミューズを見つけ並外れた才能を発揮し始めるというストーリー。
芸術家と女看守(であり絵のモデル)の、絵を描いてる間は画家とモデルという関係性でありながら、普段は囚人と看守という複雑で奇妙な関係性がとても面白かった。

ウェス・アンダーソンらしいバッチリキマった構図の中で登場人物たちが動き回る感じがとても心地よく、まるで動く絵本を見ているような気分にさせてくれる素晴らしい作品でした。

最凶線