「毎度おなじみウェス・ワールドでお送りする10作品記念号」フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊 とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5毎度おなじみウェス・ワールドでお送りする10作品記念号

2022年1月29日
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本感想の構成 :
1.追悼
2.旅行ガイド
3.特集

監督作品通算10本目にしてまだ深化するかという洗練されたウェス・アンダーソン節に、見所と情報量の多さ。そんな監督もきっと読んできて影響を受けたであろう20世紀の作家たちと彼らが愛した街へのラブレターで愛はすべての原動力?変革を起こせ!例えば過酷な状況・反社会的な印象から名を馳せるアーティストや、例えば当時の若く煮えたぎった熱いエネルギーを放つ学生運動の中心。その語り口はたまについていけなくなりそうにもなるけど、やっぱり愛しい。

まず発想が面白い、アイデアの時点で勝ってる。彼の作品はいつも昔っぽくも何処か時代不明感もあるので、"昔ながらの"という表現が合っているかは分からないけど魅惑的な、そして虚構のフランスで繰り広げられる人間模様をこれでも堪能させてくれる。緻密に計算された構図ややり取り、彼の作品でしかない作風にどっぷりと浸かることのできる時間。配置まで考え抜かれたであろう美術や職人技の織り成す独自のテンポが病みつきになる中毒性。そこには馴染みのメンツに新しくファミリーに加わった人もいて、その誰もが時に無機質に時に感情的にセリフを捲し立てスクリーンの中央を支配したり、絵本から飛び出したようなスムーズな連携を見せてくれる。画面の隅々まであまりに見事に作られたチャーミング&スタイリッシュな世界観ゆえに"お洒落の権化"みたいなイメージが先行している感もあるし、実際そういう層に受けて支持層を広げているのも分かるけど、やっぱり個人的には時折出てくる残酷さというか、決してファンタジーなそれではない感じが好きで、本作でもそうした面は遺憾なく発揮されていたと思う。エグみ好物です。

最高すぎるタイトル、キャストや設定など存在を知ってからずっと楽しみにしていて、今年トップレベルに高まっていた本作。主演はティモシー・シャラメなの?ベニチオ・デル・トロなの?…という疑問なんかも実は複数の話(大きく分けて3つ)から成るオムニバス形式だったり全力豪華アンサンブルキャスト。無駄遣いが過ぎる。蓋を開けてみるとその高すぎる期待を超えてきた感はなかったけど、それでもやはり彼のフィルモグラフィーを追いかけているファンとしては嫌いになれない時間だった。

とぽとぽ