劇場公開日 2021年4月9日

「下北沢! ほのぼの、サイコ~!」街の上で CBさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5下北沢! ほのぼの、サイコ~!

2021年11月12日
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鑑賞方法:映画館

下北沢という街のごく狭いエリアで、主人公と元彼女の周りで進んでいく日常を切り取った映画。

前半の主人公と彼女の別れ話シーンで思う。「つきあっている」というのは権利ではないな。
「なんで男と女は友達づきあいできないの?」「そんなにうまく、寂しさをコントロールできないよ」というイトの言葉。
「長いの?下北沢に住んで?」という問いに対する、「いちばん、どうでもいい(と感じる)時間の概念」という回答。
あいかわらず、いろいろ気づかせてくれるじゃん。さすが、今泉監督。

各シーンは、観る人によっては「間延びしている」と観えるかもしれないが、自分にとってはこの各シーンの余韻みたいなものが、とても心地よい。その余韻で何かを観せたいわけではなく、ただ味わうだけ。自分にとっては、これが今泉ワールド。

イトが自宅で主人公と布を広げるシーン。なんの意味があるわけでもないのだけれど、なんか映像的にビビッときた。

「古書ビビビ」、中華「眠亭」、バー「水蓮」、映画館「トリウッド」、居酒屋「にしんば」、そして当然の劇場「スズナリ」と下北沢オンパレード!
さて、主人公がぶらっと入ったライヴは誰だったんだろう?

全体は、小さな小さな話だが、それぞれの話が最後に集まってくるこの構成は好きだなあ、こういうところで今泉監督に魅かれるのかな。
本作は、今泉監督が「下北沢映画祭でお披露目するために、下北沢を舞台にした映画を撮ってくれ」とのオファーを受けて2019年に撮影した作品と聞く。オファーされた内容、つまり「下北沢という街を描く映画」として、最高なんじゃないだろうか。

さて、ここまで書いてきてあらためて、オープニングを振り返ってみる。
「私が見たかった映像」、「存在している...街の上で...」
なるほど、ラストまで観て、なるほどこの冒頭の字幕の意味がわかる。たしかに、映画には存在しないが、街の上には存在している(していた)映像だねえ。これらの言葉の意味は、ぜひ、劇場で観て納得してください。

おまけ
"姪っ子の好きなお巡りさん"。下北沢なら、こんなお巡りさんもいそう ...って、いるわけないか。

おまけ2
ビム・ベンダースの映画か、「ベルリン・天使の詩」(1988)、「アメリカの友人」(1987) いずれも観てないなあ。20代後半は映画観てなかったからなあ。これからでも、観る機会をつかんでいこうと思います! そしてそういうタイプの映画を語り合う青年たち、いかにも下北沢にいそうだよね!
(上記は、本作鑑賞当時の感想。「ベルリン…」はその後観る機会に恵まれました。幸せ)

おまけ3
予告編は、その映画をみにきそうな観客を想定して入れてると思うのだが、今回流された「キネマの神様」「いのちの停車場」「はるヲうるひと」3連発は、今泉ワールドを好む人たちにはまるとは、決して思えなかったけどなあ。

CB
グレシャムの法則さんのコメント
2024年2月15日

今泉力哉監督、ホントいいですよね。
大声であちこちに触れ回って大絶賛するよりも、ね、コレはまるよね、と誰かとなんとなくひそやかに語り合うのが、似合うような。
先週は、『アイネクライネナハトムジーク』をDVDで見直して、改めてひとり唸ってました。

グレシャムの法則
ゆきさんのコメント
2024年2月5日

度々失礼しますm(__)m
ワタクシこの作品大好きなんです!CBさんご覧になられたのですね!嬉しい♡
使われている曲はGEZANというバンドの「ENDROLL」という曲です。
♪エンドロールに名前がなかった♪
青の出演シーンも丸々カットされていて正にエンドロールに名前がありませんでした。
その後♪だから僕らは旅を続けなくちゃ♪と続きます。
映画にはならない私達の日常そのものを表している様で、何だか切なくなります。痺れポイントでしたw
そして、映画で使うシーンだからと、お茶の上で白い布を広げるシーン。お茶を気にする青に対してイハは
「実際もお茶の上なんで」と言う。しかし映画作製シーンもこの映像も流れる事はありません。
いや、これは、この、「街の上で」の映画で、使われているじゃありませんか!痺れポイントその2でしたww
今泉監督の小技を浴びまくる作品でした。

ゆき
セロファンさんのコメント
2022年7月31日

CBさん、コメントありがとうございます!
≫小さな小さな話だが、それぞれの話が最後に集まってくる
あのラスト好きでした。今までの小さな話が繋がってきて、最後にちょっと嬉しくなってしまいました。

セロファン