劇場公開日 2021年4月9日

「どこもかしこも今泉力哉。やってくれたなオイ!」街の上で Pegasusさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5どこもかしこも今泉力哉。やってくれたなオイ!

2021年4月10日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

幸せ

今泉力哉監督舞台挨拶&サイン会付き上映にて。

「わぁー!大好きだこれ!好き好き大好き!」これが鑑賞直後の心の叫び。

今泉監督の優しい演出とシュールな笑いが最大限に惜しみなく発揮されている。
上映中、満席の劇場内が笑いで包まれたシーンは沢山あったし、久しぶりに声を出して笑い転げた。
偶然が重なり続け非現実的なシーンが多いけど、そんな「非現実的」というのを観客に敢えてツッコませることで笑いをリードしている。
警官の複雑な話に、自主映画の控え室や、終盤に街中でキャラが大集合するシーンは爆笑必至!思い出すだけでも笑えてくる…
「映画」というより「コント」を観ているような感覚に近い。笑いのテイストで言うとアンジャッシュの勘違いネタに近いかな。

勿論、ただ笑える映画な訳でも無くクソわがままで面倒くさい恋愛劇でもある、というかそちらがメイン。
長回しで男女のリアルな会話を切り取るイメージのある今泉監督だが、今回は舞台挨拶でも語っていたが長回し会話劇が印象的。
特に城定さん(城定秀夫監督で名前を説明していたため印象深く覚えてる)の家での「友人同士」としての会話と「男女」としての会話は面白かった。
友人としてならベラベラ喋れるけど、男女としてだと買い被ってキャラ崩壊する。みたいなある意味恋愛の哲学的テーマについてあれこれ言い合う意見は今泉監督の持論なんだろうな。『有村架純の撮休』6話での「普通って何?」をなんとなく思い出した。
今泉作品は他愛も無い、又は奇妙な会話劇の中にポイと哲学的問いを提示して、それを好き勝手展開させていくのが見所の1つだなと発見。まだあまり今泉作品は観れていないからもっと観ていきたいな。

それにヒロインの存在も面白さの1つ。
・穂志もえか演じる浮気して翻弄する女性。
・古川琴音演じる恋愛に問題を抱える女性。
・萩原みのり演じる新人女性映画監督。
・中田青渚演じる主人公の「友達」である女性。
みんなクセが強くて面倒くさくて。それだけど生き生きとしていて。
女性蔑視が社会問題になってきて「女性をモノとして扱う男」という描写が際立つようになったが、今泉監督の映し出す女性はみんな様々抱えながらも自分勝手に活気よく存在していて、今泉作品にしか無い存在感がある。いい意味で女性らしくないというか。成田凌のセリフじゃないけど「男と女以前に同じ人間じゃないか」という感じ。
みんな生き生きとスクリーンに映されるし、その姿が体温を感じる程リアル。
だからみんな愛おしく感じるし、キャラが際立つ作風なので結果的に映画自体が愛おしくてたまらない。やはり今泉力哉、演出上手いなぁ…

あんなに客席が湧いたのは初めての経験かもしれない。満席って作品に集中しにくくなるから毛嫌いする人も多いけど、逆にみんなで一丸となって見守るような別の楽しさもあるから案外好きだったりする。
それにミニシアターは観客の反応が分かりやすいからもっと楽しいし、料金がシネコンより高くても通ってしまうんだよな〜
映画館という知らぬ人達が同じ体験を共有出来る空間にピッタリな作品です。さらにインディーズ映画的なレトロな空気感も漂いミニシアターとは相性が抜群な気がする。
爆笑必至の誰かと語りたくなる恋愛映画。
ある意味、究極のデートムービーだと勝手に思っています。
苦言は「もっとこの人達を覗いていたかった」のただ1つ。他は最高です。口コミで広まって欲しいな…
時間があったらもう1回観にいきたい。次は恋人と一緒に、っていないんだった……

Pegasus