「哀しいハグ」ハスラーズ うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
哀しいハグ
何も持たない彼女たちにとって、家族だけが生きるための動機。てっきりちょっとエッチな小悪魔たちの過激ないたずらを追いかけたコメディ映画と思いきや、リーマンショックでどん底に落ちた経済の、ある意味「被害者たち」のサバイバルを描いたヒューマンコメディだった。
華麗に、スタイリッシュに、ヒップに映像が行動を追いかけるようでいて、全編を通して乾いた笑いと優しさが包み込む。最後のハグは、泣いてしまった。
PG12のレイティングも気にならない。エロさよりもグロさのほうが味付け濃いめ。おっぱいとお尻は同性の目線で見ると武器にしか映らない。ストリッパーの楽屋は、男にとって夢の楽園どころか、戦場のかくれ要塞だ。
彼女たちが戦利品として身に着けるバッグや靴も、ほんのいっときの達成感を形にしただけのトロフィーに過ぎない。羽振りが悪くなれば金と一緒に消えていく。でもおばあちゃんとの愛情、娘に注ぐ情愛は尽きることがない。
女同士の奇妙な友情も、形を変え、時にぶち壊しながらお互いを認め合う。近ごろ声高に叫ばれる女性の地位向上も、教育機会や社会のひずみに飲み込まれた彼女たちからすれば、男の欲望をそそることでしかのし上がれない。5000ドルから時には10万ドルという、それほど効率のいい「シノギ」とは言えない犯罪行為でその日を過ごしていく刹那的な生き方だ。彼女たちは、10年後自分が誰からも振り向いてもらえないおばちゃんになることなど考えもしないのだろう。
対照的にパンツスーツのジャーナリストの女が冷ややかな目で彼女たちを見つめる。「いつも悪夢にうなされる」というデスティニーの告白にも眉をひそめるだけ。違う生き物のように価値観が相容れない様子が描かれている。
言葉を選ばずに言えば、性を売ることでしか金を得ることができない女たちがたくましく生きていく姿を鮮烈に描いた意欲作。それにしてもコンスタンス・ウーはどれだけ役柄の幅を広げられるのか。今後も要注目だ。