劇場公開日 2020年2月7日

ハスラーズ : 特集

2020年2月3日更新

私たちは、もう媚びない――無敵の“シスター・フッド映画”が
日本上陸! 美しきストリッパーたちが、ウォール街を“釣った”衝撃の実話
興奮、驚愕、感動の映画体験…男性社会にとどめ刺す、鮮烈かつ重要な一作

ストリップクラブで働く女性たちが、エリート金融マンたちを“釣り”、大金を巻き上げていた――。2月7日から公開を迎える「ハスラーズ」は、2008年の金融恐慌(いわゆるリーマン・ショック)のさなかにウォール街で起きた“衝撃の実話”を描き出す、クライム・エンタテインメントだ。

“無敵”の女性たちの活躍に、観客は性別に関係なく高揚し、背中がグッと押されるのを感じるはずだ。そして本作は、鮮烈な娯楽映画であると同時に、パラダイムシフトを象徴する重要な一作でもある。


【魅力全開のキャラクター】ジェニファー・ロペスがアカデミー賞級の熱演!
ゴージャスな女優陣が、きらびやかでスマートな“媚びない女性たち”を体現

“釣り”とは、ストリッパーたちがクラブに客を連れて行き、キックバックを得る営業行為を指す。バーなどで裕福そうな男性に絡み、「ストリップクラブに行きましょうよ」とささやき、強引にブラックカードを切らせる。本作の登場人物たちは、男性に媚びることをやめ、そうして大金を奪っていくのだ。

実はこの作品、全米で興行収入100億円超を稼ぎ出した大ヒット作だ。躍進を支えたのは、ゴージャスなスター女優たちが演じる、きらびやかなキャラクターである。


・一躍ブレイクのコンスタンス・ウー扮するデスティニー

物語の主人公。「クレイジー・リッチ!」のコンスタンス・ウーが演じる。祖母を養うためストリッパーとして働き始めるが、いまいち稼ぎが少ない。そこで、ひときわ輝く女性ラモーナと接近する。彼女と友情を育みレクチャーを受けた結果、収入がケタ違いにアップ。豪華な生活を手に入れ、結婚・出産も経験し仕事を辞めた。

ところが08年の金融恐慌により世界中の景気が低迷し、デスティニーも貧相な生活に逆戻り。再びストリッパーとして働き始めたものの、不況のあおりで客の質が悪く、チップも少なく、なにより孤独だった。そんななか、ラモーナと再会する……。


・奇跡の50歳、ジェニファー・ロペスが演じるラモーナ

物語のもうひとりの主人公。“女神”とも言える美ぼうと、男性・女性問わず虜にする母性とカリスマ性を備えており、恐慌後に釣りで儲けることを画策する。

演じるのはラテンの大スター、ジェニファー・ロペス。50歳を迎えるが美しさに陰りはない。序盤のハイライトにロペスのポールダンスがある。ポールに長い手足を絡ませると、しなやかな筋肉がスポットライトに照らされ、彫像のような神秘的な陰影が浮かび上がる。そんな姿に男たちは狂喜し、ステージにはチップの紙幣が乱れ飛ぶのだ。


・K・パーマー&L・ラインハート演じるメルセデス&アナベル

恋人のため弁護士費用を稼がなければならないメルセデス役を、「ドリームズ・カム・トゥルー」のキキ・パーマーが軽快に演じる。そして、緊張がマックスに達すると嘔吐してしまうアナベル役を、ドラマ「リバーデイル」シリーズで人気を博したリリ・ラインハートがキュートに担っている。彼女らも恐慌によって翻弄され、ラモーナたちと行動をともにするようになり、無類のチームワークを発揮する。


・超人気ラッパー、カーディ・B&リゾが映画デビュー!

共演陣には、ラップファンが驚くような面々がそろった。豊満な体型を隠さないポリシーが愛されるリゾと、すい星のごとく現れグラミー賞に輝いたカーディ・B(元ストリッパーでもある)が、ストリップクラブのメンバー役に。2人は本作が映画デビューとなる。

さらにアッシャーとGイージーもカメオ出演。すみずみまでゴージャス、暴力的なまでにセクシーなキャスト陣が、物語を盛り上げていく。


【予告編】私たちは、もう媚びない―― エネルギッシュでセクシーな快作!

【巧みで質の高い物語】 女性&男性編集者が本編レビュー!
うわついた気分で見てみたら… 予期せぬ“インパクト”にグッときた

第77回ゴールデングローブ賞の主演女優賞に ノミネートされるなど、特に女優陣のクオリティが高く評価されている。では実際に鑑賞すると、どんな感情が得られるのか。映画.comの女性&男性編集者によるレビューを、以下に掲載しよう。


・女性編集者は…「勇気をもらった」

学生時代は「メイド・イン・マンハッタン」みたいな恋愛に憧れたなあ……ロペスの名前にそんなことを思い出していました。でも、見始めたらびっくり。現在のロペスのギラギラとした姿にしびれました。年齢を重ねて美ぼうに磨きのかかったロペスが体現したのは、どんなときでもめげない“姉御肌”ラモーナの芯の強さと、孤独を抱える女性たちに“家族”のような愛情を与える優しさ。

ラモーナみたいな人に出会いたい――いやいや、私だっていつかはきっと彼女みたいに強く生きられるはず。ロペスからの“エール”を受けて、少しだけ勇気を持ってそう思えるようになりました。


・女性だけじゃない! 男性編集者も「満足感がすごい」

デスティニーたちが男を陥れていく様子が非常にスリリングで、盛り上がって「うおお!」と叫びたくなります。そして物語の終盤、それまでの幸福な場面がブワーッと連続して映し出されるんです。その演出が狂おしいくらい好きなので、見た瞬間、僕はもうダメでした。涙が止まらない。鑑賞後の満足感がすごい。女性映画だと侮ってスルーするのは、機会損失ですよ、これは。札束を握りしめて映画館に向かいましょう。


“マッチョイズムの限界”にとどめを刺す、刺激的かつ重要な一作
“壊れた男性社会”を生き抜く女性たち、というモチーフの意味とは――

あらかじめ言っておくと、筆者は30代の男性だ。

ロペス自身が製作を担い、「エンド・オブ・ザ・ワールド」のローリーン・スカファリア監督が手がけた本作は、「男性社会はすでに壊れている」と断罪する。劇中のラモーナは、金融恐慌は男性たちの身勝手なマネーゲームが引き起こしたとし、「だから私たちが、あいつらから奪う」と啖呵を切る。粗暴とも言える雑な手口で男性を籠絡していく過程は、美しさだけが女性を表現する手段ではなく、もはや女性性を強調する必要もないと決定づけているように見えた。

2019年に公開された映画を鑑賞し続けるなかで、いくつかの作品が共通のテーマを抱えていることに目が留まった。それは、“マッチョイズム(男性的なたくましさ、それに基づく主義)の限界”。主人公が物語を旅するなかで、男性中心の社会に対する生きづらさや構造的限界が表出する。そしてある決断をするが、その先にマッチョイズムの放棄、あるいは女性性の救済があらわれる、という筋書きだ。

例えばマーティン・スコセッシ監督作「アイリッシュマン」は、男性中心の組織である“マフィア”が好き放題の末にやがて塵芥となり、あとには何も残らなかったという荒涼たる結末を寓話的に描出した。「ターミネーター ニュー・フェイト」は3人の女性を主役に、それまでのシンボルだったアーノルド・シュワルツェネッガーをサポートに据えることで、世界の未来を暗示してみせた。

ほかにも「アド・アストラ」「ジェミニマン」などに、マッチョイズムを象徴する主人公らが、皮肉にも男性社会の問題点を明らかにするというモチーフを根底に感じた。円熟味を増す大スターが(意識的にせよ、無意識的にせよ)そんな物語を紡いだ点が、示唆に富んでおり非常に興味深い。

そして「ハスラーズ」は、強引に金を奪う(Hustle)女性たちの姿とともに、世間体のため被害を告白できない男性たちの滑稽さにスポットライトを当てる。傑出した娯楽性と刺激を備えながら、上述の潮流を極めて明確に表現し、マッチョイズムに三行半を突きつけるのだ。そうした作品が興行的大成功を収め、多くの映画賞で評価されている事実は無視できない。世界規模で急速に変容する社会を映し出した、重要な一作だ。

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