「生態」ハスラーズ U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
生態
いわゆるクライムストーリーだとは思うのだが、緻密な計画も大胆な犯行もなかった。あるのはただただ乱痴気騒ぎから抜け出せない人々の話だった。
彼女達の行動や思考に身勝手だなあとは思うものも、彼女達が悪いとも思えない。母という側面があったりドロップアウトした経緯があったり。職業の選択は自由だけども、そもそも選択肢が極端に少ない状況があったり。
そんな環境下でも、女性は母となり子供は育っていく。お腹は減るし、突き動かされる母性もありはするのだろう。
彼女達は彼女達の出来る範囲で最大限稼ごうとしてたわけだ。
唖然とするのは男達の馬鹿さ加減だ。
俺は酒も飲まないし歓楽街に行く習慣もないので、アレが普通かどおかは分からないが、彼女達が巨万の富を手にするだけの頭数はいたって事になる。
…まぁ、彼等もある意味金に狂わされてるのであろう。そおいう時代だったのかもしれない。
日本でいうバブル期にも同様な人間達はいたと思われる。使ってもすぐに補填される状況にあるのなら執着も薄いんだろうと思う。
それとは真逆に搾取される側の女性たち。
大金を手にした時の弾けっぷりは狂気じみてた。それ程に抑圧されていたのだろうし、信じ難い状況に有頂天だ。
金へなのか、男たちへなのか、社会へなのか…復讐できた達成感でもあったのだろうか?
金を稼ぎ、どんどん派手になっていく女達。もはや実業家レベルの給料だとも思うのだが、それだけでは心は満たされないようで、娘を学校に送っていく道すがら、向けられる視線には居心地が悪そうだ。
おそらくならば、そのオバさん達の何千倍も稼いでいるだろうし、生活を誰かに依存する事もない。彼女の思う幸せは、お金だけでは賄えないものでもあるようだった。
祖母に渡すお金も札束レベルになっていく。自身はチンチラの毛皮を身にまとい、裕福この上ない生活でもあるようだ。
だけど祖母の服装が派手になる事はなく、他界するまで以前と変わらぬ地味な身なりだった。
彼女は招かれたパーティーで、楽しそうにしながらも話を合わせていただけかもしれない。
どんどん身なりが派手になっていく孫を憂いながらも微笑んでいたのかもしれない。
そんな推測もあって、彼女達を嫌悪しきれずにいる。
エンドロールが流れる中、アナウンスが流れる。「もう待ってても女の子達は出てこないよ。早く帰りな。」とか、なんとか。
プッと吹き出す。
きっとそうなのだろうな、と。
時代が巡り同じような事が起こっても、今作のような女性はもういないのだろうなと。
女性は強かに学習し、進化していくのであろう。変わらないのは馬鹿な男だけだと言われてるような気になった。
そして、それはあながち的外れではないような予感もあって、思わず笑ってしまった。
カマキリのメスは、交尾後にオスを喰らうという。自然界のルールが不思議と合致したように思え…性欲の衝動を刺激されたオス程、単純で狩猟しやすい生き物はいないのだろうな、と男に産まれた業を嘆く。