「愛とは返事を求めない声さ…」mellow わたろーさんの映画レビュー(感想・評価)
愛とは返事を求めない声さ…
『愛とは返事を求めない声さ 一方的に贈るもの』と本来偶像である"アイドル"に歌わせた作詞家がいる。 この作品にはあまりにも一方的な恋の矢印がいくつもあって、非常に苦しくなる映画だった。
今泉監督らしい、恋愛模様を俯瞰に観察する映画。そして、これも今泉監督らしい、どの登場人物も愛しくなる言葉、演出の巧みさ。本当に素晴らしい。
想いを伝えるということの難しさと尊さに焦点をあてているように思えた。過去作の「パンとバスと2度目のハツコイ」や「愛がなんだ」とはまた違うメッセージ性だけど、その根幹にある『どんな愛の形も否定するものではない』という温かさは揺らいでないように思う。
例えば、予告編にもある田中圭とともさかりえのシーン。旦那さんがいるのに直接その話をすることが正義なのか不正義なのか、コミカルなやり取りに笑ってはしまうんだけど、思い返すとどうなんだろう。明確な答えを出さず、丁寧に描いた上でその答えを見る側に委ねるのがこの監督の真骨頂。
花の匂いを嗅ぐのと口から息を吐き出すのをあえて対比的に描いているシーンも良かった。
花は視覚的に楽しむだけでなく、嗅覚的にも楽しめるものだけど、いつかは枯れてしまう。 ラーメンがいつかはのびてしまうのと同様に。 鮮度ある時間、つまり"恋心"があるうちに味わう、つまり"告白をするかどうかという判断"が重なって切ない。花とラーメンが良いモチーフになっていると思います。
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