「心に残るメロウな映画」mellow えりけんさんの映画レビュー(感想・評価)
心に残るメロウな映画
Mellowがどんな映画かと聞かれて、主演の田中圭さんは『メロウとしか言いようがない』と何処かで仰っていたように思いますが、確かにMellowはとってもメロウな映画でした。
誰かが誰かを好きになる。告白をする。そして、実らない。それだけのお話。でも、ただそれだけのお話の中に流れる空気が、とても優しくて柔らかくてメロウで心地が良いです。
登場人物たちも、みんな可愛らしくて愛おしかったです。
陽子が好きです。甘い砂糖菓子のような雰囲気の女の子。でも強い意志があって勇気があって素直で愛おしい。
宏美が好きです。凛とした美しさのある女の子。真っ直ぐで強くて清らかで可愛らしい。あのファイトと言うシーン、すごく印象的でした。
青木夫妻が好きです。奇妙で可愛くて可笑しい麻里子。奇妙で愛が深くて可笑しい修二。ぴったり磁石がひっつくようにお似合いのお二人なので、どうか、あのままご夫婦でいて欲しい。あのシーン、とっても面白かったです。
さほが好きです。とても賢い子。子供らしい可愛いらしさと真っ直ぐさがあって、ときどき鋭く真理をついた発言をする子で、どきりとさせられました。
木帆が好きです。優しくて控えめ、でも、芯が強くてしなやか。木帆は、最後のラーメンのお客さんにバラを渡すときに『お邪魔じゃ無かったら…』と言い、夏目さんへの手紙でも『ご迷惑でなかったら、手紙を出してもいいですか?』と言うような子。ラーメン屋も、はじめは黙って閉店してしまおうと思っていたような子。そんなに控えめにならなくても良いのに。でも、そんな子。髪型の僅かな変化を夏目に気付かれて、少しだけ恥ずかしそうに笑う木帆。夏目に手紙を渡すときに、一瞬だけ意を決したような顔をする木帆。ラストシーンの木帆の表情もすごく良かったです。可愛くて愛おしかった。
夏目が好きです。あんなにお洒落でカッコいいお花屋さんだけれど、中身は木帆と同じくらい控えめで地味な人のように感じました。穏やかで静かな日常を愛する人。小学生のさほとのやり取りで『あ、これ可愛いじゃん』と優しく笑う。小さな細やかな可愛さを愛する人。理不尽で奇妙な言いがかりに心を乱されて、堪らず深く深く煙草をふかし、少し悲しそうに笑う人。翌日まで落ち込んで、ションボリと背中を丸めてラーメンを啜る人。どこか人間味を感じてとても愛おしい。可愛い。ひろみも言っていたけれど、本当に、カッコよくて可愛い。
劇中、たくさんの告白が出てくるけれど、夏目だけが自分の気持ちを言っていない…でも、私はあの最後の夏目が作った花束が彼の気持ちを語っていると思うのです。あんなに柔らかくて優しくて可愛い花束。花を一本一本選ぶ夏目のシーン、愛おしさが溢れていて、胸がいっぱいになってしまいました。
結末は描かれず、観るものに委ねられている形ですが、私は、夏目の告白はやはり『ありがとう、でもごめんね。』と言われてしまうと思っています。だって木帆は、これから海外に行くと決心しているのだから。きっと夏目もその事をわかっていて、それでも気持ちを伝えたくて告白するのだろうと。それでも良い、と思える物語でした。
私はとても好きな映画です。今泉監督の他の作品も観てみたくなりました。