「チャオ! カルロ」水と砂糖のように Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
チャオ! カルロ
自分の知識不足を思い知らされたドキュメンタリーだった。
挙げられた映画の半分以上は知らないし、知っている映画でも、“撮影”に注目して観たわけではないので同じことだ。
曰く、「自然光」。曰く、「光の導師(グル)」。
曰く、「短いカット、めまぐるしく変わる構図」。
曰く、「“目”を愛する、クローズアップの達人」。
そう語られても、ピンとこないのが口惜しい。
本作品は、ほぼインタビューの連続で、時系列に沿ってフィルモグラフィーを追っていく。公式サイトにあるように、錚々たる出演者の顔ぶれである。
父や兄も映画関係者で、早くも15歳よりスタジオに入り込み、一つずつ段階を経てマエストロになった。
ヴィスコンティの処女作「郵便配達」の現場にもいて、ロッセリーニ「無防備都市」では連合軍からフィルムを調達する。
反ファシストで、低予算映画でも工夫して腕を磨いたとか、ルネサンスの工房のように芸術家と職人を区別しない、といった話もあったと記憶する。
白黒映画とカラー映画の両方の時代を生きた人で、カラーに対する考えは予告編にある通りだ。
多くの人に信頼され愛されたカルロは、技術面に限らず、撮影現場の“潤滑油”としても重要だったらしい。
ウディ・アレン曰く、「自分は社交的ではないので、カルロがいてくれて助かった」。
「絵画、音楽、文学を愛することが大切」。
「大いに与え、大いに得る。与えなきゃ、得られない」。
そんなカルロの“語録”も、いくつか出てくる。
面白いドキュメンタリーだが、レベルが高い。事情通でないと、フルに楽しめないはずだ。
あまりに展開が早く、記憶に刻む前にどんどん先へ進んでしまうので、理解できないし、また覚えられない。
90分という制約があったのかもしれないが、ナレーションによる進行を充実させて、もう少し整理して進めて欲しかった。