水と砂糖のようにのレビュー・感想・評価
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未来のフィルムメーカーへの指南書的ドキュメンタリー
イタリアの名撮影監督カルロ・ディ・パルマの軌跡を追ったドキュメンタリー。映画製作における通説「監督がいなくても撮影現場は成り立つが、撮影監督がいない現場はありえない」が示すように、画作りにおける撮影監督の役割が端的ながらも分かる内容となっている。 モノクロならモノクロなりの、カラーならカラーなりの表現方法を模索していった彼の功績をたどるという構成なため、映画ファンというより、将来のフィルムメーカーへの指南書的な意味合いが強い。 そのため、ディ・パルマの隠された真実を探るといった要素は皆無な、至って真面目な作り。 公的なインタビューをあまり受けないウディ・アレンが、長年の仕事のパートナーだったディ・パルマについて雄弁に語っているのは、ちょっとした見どころかも。 ただ、『水と砂糖のように』というタイトルは、あんまり本作のテーマとは合ってないのでは?と思わなくもないが。
チャオ! カルロ
自分の知識不足を思い知らされたドキュメンタリーだった。
挙げられた映画の半分以上は知らないし、知っている映画でも、“撮影”に注目して観たわけではないので同じことだ。
曰く、「自然光」。曰く、「光の導師(グル)」。
曰く、「短いカット、めまぐるしく変わる構図」。
曰く、「“目”を愛する、クローズアップの達人」。
そう語られても、ピンとこないのが口惜しい。
本作品は、ほぼインタビューの連続で、時系列に沿ってフィルモグラフィーを追っていく。公式サイトにあるように、錚々たる出演者の顔ぶれである。
父や兄も映画関係者で、早くも15歳よりスタジオに入り込み、一つずつ段階を経てマエストロになった。
ヴィスコンティの処女作「郵便配達」の現場にもいて、ロッセリーニ「無防備都市」では連合軍からフィルムを調達する。
反ファシストで、低予算映画でも工夫して腕を磨いたとか、ルネサンスの工房のように芸術家と職人を区別しない、といった話もあったと記憶する。
白黒映画とカラー映画の両方の時代を生きた人で、カラーに対する考えは予告編にある通りだ。
多くの人に信頼され愛されたカルロは、技術面に限らず、撮影現場の“潤滑油”としても重要だったらしい。
ウディ・アレン曰く、「自分は社交的ではないので、カルロがいてくれて助かった」。
「絵画、音楽、文学を愛することが大切」。
「大いに与え、大いに得る。与えなきゃ、得られない」。
そんなカルロの“語録”も、いくつか出てくる。
面白いドキュメンタリーだが、レベルが高い。事情通でないと、フルに楽しめないはずだ。
あまりに展開が早く、記憶に刻む前にどんどん先へ進んでしまうので、理解できないし、また覚えられない。
90分という制約があったのかもしれないが、ナレーションによる進行を充実させて、もう少し整理して進めて欲しかった。
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