「絵作りのスケールが物足りない」グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇 AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)
絵作りのスケールが物足りない
太宰治の未完の遺作をケラリーノ・サンドロヴィッチが舞台化し、その戯曲を映画化したという、やや特殊な経緯で生まれた作品。舞台作品の映像化にありがちだが、本作も基本的に会話劇を中心にストーリーが進む。軽妙な台詞のやり取りに、寄り気味の映像で見せる俳優の表情を楽しめる反面、映画らしいスケールの大きな構図や、ダイナミックな動きの点で物足りなく感じた。一例を挙げるなら、愛人の一人・保子(緒川たまき)が階上の部屋から身を投げるという衝撃(&笑撃)のシーン。視点は田島らがいる居間からのままなので、舞台劇の焼き直しを見せられている気になる。愛人たちが一堂に会する庭園でのお別れ会は、空間を活かした絵作りでかろうじて挽回していたが。
太宰の同作に着想を得た伊坂幸太郎の「バイバイ、ブラックバード」をWOWOWでドラマ化した作品の方が、ほどよくはじけていて個人的には楽しめた。見比べるのも一興ではなかろうか。
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