「凄い人がいる」海山 たけのおと xmasrose3105さんの映画レビュー(感想・評価)
凄い人がいる
海山さん。
この人は、本物の自分になろうとしている。
どこまでも湧いてくる探究心で、ズンズン進んでいく。そうすると、道が拓ける。もっと広く、自由に。「ガイジン」の尺八奏者だから、当然、壁もある。古典楽器に即興は許されない。父親譲りのジャズの感性など、ご法度。でも、人生は短い。他人がダメということを素直にきいていたら、あっという間に終わってしまう。自分の声に素直に従える強さ。
演奏だけじゃない。創り出すのは奏法、曲、楽器までも。果てしない。こんな才能の塊のような人がいるんですね。
でも重要なのは。この映画は息子さんが撮っている。海山さんの奥様は今は離婚しアメリカのホスピスで働いている。日本でその年齢の女性はスーパーのパートくらいしか仕事がない。アメリカのほうがまだ優しいとわかったから、と。海山さんは唯一無二の人だが、数々の活動と創作ができたのは、このダイアンさんがいたからこそ。お嬢さんも息子さんも感性豊かに育ち、この映画も、だからこそ生まれた。ダイアンさん、あなたの辛抱が土台にある。静かな語り口に、言葉にはならない何かを感じました。
家族か、自分か。生きるということは、二つを両立できない時もある。本物を目指せば、余計そうなる。それでも、夫婦となり、試してみたからこそわかること。
どうしても「孤独」=寂しい、と思われがちだが、孤独=「自由」とも言える。誰かに合わせる時期を経て、徐々に自分の心に合わせていく事を大事にしたくなるのは自然なこと。海山さんも、ダイアンさんも、そして私や誰かも。
尺八の音色ですが、現代のCD配信音源とイヤホンでは超可聴域がカットされるので、今の世では凄さが伝わりにくいのでしょうね。耳には聴こえない周波数音が出ている。凄みの元ではないかな。もっと本来の「音色」を音源やスピーカーのメーカー、演奏の興行側が世に知らしめたら良いのに...「一音成仏」は、音色あってこそ。だと思います。