「最も「I Will Survive」が効果的に使われた映画」完璧な他人 バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)
最も「I Will Survive」が効果的に使われた映画
イタリア映画『おとなの事情』の韓国リメイク作品。フランスでは『ザ・ゲーム 〜赤裸々な宴〜』としてもリメイクされておりもその他にもロシアやドイツなど様々な国でリメイクされたことで2019年には、最もリメイクされた映画としてギネスに認定されたほど。
題材が題材だけに、国が違っても扱いやすい作品である。さすがに全部観るわけにもいかないし、日本で観られるものも少ないため、『おとなの事情』以外はまだ観れていないのが残念だ。
大まかな設定は、オリジナルの筋書き通りという感じではあるが、細かいネタの部分で韓国版ならではのオリジナリティを出していて、多くの国でリメイクされたことは納得ができるほど、少しの設定変更でいくらでも作れてしまいそうな優秀すぎるベース映画と言ってもいいかもしれない。
40年以上親友関係が続いている4人の男とその妻達の間で起こる会話劇となっている。一見、裕福で何不自由のない暮らし、関係良好にみえる夫婦も一皮むけば秘密はあるし、隠し事はないと言っている親友の間でもそれは同じである。そんな暴露合戦のアイテムとして利用されるスマホ。
個人情報や秘密が満載のスマホを見せ合うことで楽しかったはずのパーティーが修羅場と化していく中で、それぞれのエピソードが巧妙に絡み合って、コメディではあるのだが、笑ってはいられない展開の数々が妙な緊張感も漂わせる。
秘密がない人間なんていないし、実際に何でも話してしまったら、関係は崩れてしまうことは明白なのだが、誰もが「隠し事はよくない」「何でも話して」と言うが、実際にそれをしたら…こうなりますよ!!という偽善への皮肉でもあるのだ。
韓国版の決定的な特徴として挙げるとすれば、ジュンモの着信音が「I Will Survive」になっていること。「 I Will Survive」という曲はグロリア・ゲイナーの名曲で日本では「恋のサバイバル」というタイトルで発売されている。
デミ・ロバートやケイクなどによって何度もカバーされたり、ドラマや映画でも使用されている名曲中の名曲。最近だとドラマ『ルシファー』や映画『アングリーバード』の中でも使用されていた。
歌詞の中の「Go on now, go, walk out the doorJust turn around now’Cause you’re not welcome anymore」というフレーズは、日本語にすると「今すぐドアから出ていけ!何故なら君はもう2度と歓迎されはしない」という意味なのだ。
何故、よりにもよってジュンモは、こんな曲を着信にしているのかと思うかもしれないが、ジュンモはおそらく少しおバカな設定のため、曲の歌詞の意味を理解していなかったのだ。
後半では「I Will Survive」が流れる度に、地雷を踏んだような展開が次々と勃発して、ラストには皮肉にも歌詞が響く。
今作は、最も「I Will Survive」が効果的に使われた映画と言っても過言ではないだろう。