「苦虫百匹、質問百項。」i 新聞記者ドキュメント ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
苦虫百匹、質問百項。
第93回(2019年)キネマ旬報ベスト・テンで文化映画第一位の作品。
劇場公開「新聞記者」の原作者である、東京新聞の望月衣塑子記者の
日常に密着したドキュメンタリーなのだが、取材活動がかなり面白い。
常に突撃姿勢で質問を投げる望月記者の前にはだかるは、菅官房長官。
この二人のv.s.が何より笑えるし考えさせられる。いつも苦虫を噛んだ
顔の菅さんが、記者を前にすると苦虫一匹が百匹の顔になり、あーあー
またその質問かよ。うるさいなーしつこいなー。いい加減にしてくれ。
の表情でいっぱい。空気を読み、忖度をし、権力に逆らわぬ新聞記者
が書いた記事のどこに真実がある?と思うくらい孤独な闘いが浮彫に。
今作は彼女を決して英雄視はしていない。いつも大きな鞄をゴロゴロ
転がして両手に大荷物であちこちへ移動するが、まさかの方向音痴?
だったり、夫の方が料理が上手いのよ~と笑い手作り弁当を食べる姿
など、愛嬌溢れる普通のおばさんとしての姿も映し出す。行き詰まる
取材や過剰規制の在り方に森監督が疑問を投げかける場面も忘れ難い。
今作では、伊藤詩織氏、籠池夫妻など、渦中の人物も次々と登場する
ので、その素顔とメディアでは語られなかった発言に注目すると良い。
望月記者を通して、メディアが置かれている今の現状が分かってくる。
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