「小学校で焼いた図工の灰皿を思い出した」ハルカの陶 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
小学校で焼いた図工の灰皿を思い出した
笹野高史の陶人先生がいいですね。
―「備前が何たるか」、この人が語ってくれればあの“説明口調”もすなおに聞けるのです。
ずっと名バイプレイヤーでおられる笹野高史さんの、これは紛れもない主役作品ではないでしょうか。
映画では突っ込み所もいろいろあって、OL奈緒のトントン拍子も「ないだろ!」と思ってもみるのですが、でも見る側が意地悪にならずに焼物の世界に惹かれていくのは、たぶん原作のコミックがとても良いからなのだろうと感じました。
石器時代を経て、人類が火を手に入れて最初に始めたのが陶芸です。
材料は土と火だけ。
ただの入れ物で良かった土の器が、最初期から「形」やら「装飾」やら、=遊び心の創出を発露させたのは、土が、(土そのものが)その手触りの感覚と工夫を生み出させ、人類の脳の発達と美意識の誕生を呼び醒ましてくれたからでしょう。
僕も備前の、竹筒様の花差しをひとつ持っています。
持ち重りのするこの花瓶は、押入れから取り出してみると、部屋の空気を一変させます。
「用の器」として誰かの人生を豊かにするために、備前の釜の誰かがこれを焼いてくれたのですね、ありがたいことです。
“忙しい”は心を亡くすこと。忘れていた生活の潤いを取り戻したい。
野を歩いておみなえしか紫式部を、
里山を歩いてススキか楓の枝を一枝摘んでまいりましょう。
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遠き日のろくろの土の手捻りの
柔きは今やと声の聞こゆる
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