「うっすら壊れている人たちの笑劇」ジョン・デロリアン 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
うっすら壊れている人たちの笑劇
デロリアンというのは、もともとタイムマシンの名前でもタイムマシンのベースになった自動車でもなく、その自動車を設計したエンジニア兼起業家の名前である、というのは知っていても、どんな人かはよく知らなかった。このバカげた珍事件を描いた伝記映画が史実を完璧に描いているとは思わないが、不運に見舞われたカッコイイ車というイメージの裏で、こんなドタバタがあったことには好奇心をそそられる。
物語としては、詐欺師同然の密輸パイロットが、有罪判決を避けようとFBIの協力者になり、近所に住んでいた自動車業界のセレブ、ジョン・デロリアンを麻薬取引に巻き込んでおとり捜査にかけようとした顛末が軸になっている。
『バリー・シールズ』と『アメリカン・ハッスル』を足したような話だが、出てくる人間みんなに小物感が漂っていることで、ブラックコメデイの要素が強くなっている。ダメな人間がダメなことをしでかす様が見たい!という自分のような人間には愉しい時間であり、主人公たちに救いようのない欠落が感じられるのも愛嬌になっている気がする。
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