映画大好きポンポさんのレビュー・感想・評価
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細かいネタやディテールが詰め込まれた90分、何度見てもするっと楽しく見られる
平尾隆之監督に取材するため試写で2回、公開後に映画館で2回見ていますが、毎回するっと楽しく見られるのが良いなと思っています。本編90分というコンパクトな尺に、アニメならではの表現や映像編集の奥深さ、原作漫画をふくらませた物作りのヒリヒリするドラマが詰め込まれていて、繰り返し見ると細かいところに色々とネタが仕込まれていることにも気づくことができます。例えば、序盤でジーンが「いい絵だ」と言う、水たまりで跳ねるナタリーの横には、さり気なく後半登場するある人物も歩いています。劇中ポスターも1枚1枚デザインされていて、「ニャリウッド」の世界を構築するディテールの凝り具合が楽しめます。
編集は本当に面白い
映像の編集ってやってみると本当にすごい面白いものだが、映画のメイキング映像でも、映画制作の舞台裏を描いた内幕ものでも中心に取り上げられることがすくない。スタジオで延々と作業するものなので、画的に地味だからしょうがないんだろうけど、本当はめちゃくちゃ面白くて、映像制作の醍醐味なのだが、この編集の面白さを存分に伝えてくれる作品がついに出てきた。物語の前半こそ撮影現場のエピソードがあるが、映画の後半は編集と金策の話になっていく。同じシーンでも編集次第で全く別の印象のシーンとなることが、わかりやすく提示されるが、それ以上に本作全編が凝った編集にあふれているのも良い。
僕が好きなのは、ポンポさんとアランがカフェで向かい合って座って予算の話をしているシーンだ。オーソドックスなつなぎだが、実に順番が的確だ。2人が向かい合っているのを2ショットで捉える、奥には大きな窓があって強い西日が差し込んでいるため、2人は逆光気味で暗く映っている。2人が困難な問題を抱えていることを示唆しているカットだ。そして、2人の正面カットを切り替えしてつなぐのだが、西日によって顔の半分が影に覆われている。2つに分断された顔が、やるかやらないのか、2つの選択肢の決断をする場面であることを伝え、やると決めた2人を今度がカメラが窓側に入り、2人の未来を暗示するように明るく照らしている。このつなぎの順番を逆にしてしまうと、物語の展開は理解できても、伝える力が弱くなるだろう。
このように、つなぎ方にもちゃんと意図がある。素材の強さを何倍にもしてくれるのだ。
一見するとタイトルもキャラクターデザインも弱い。でも実は凄く面白い映画! 騙されたと思って見てほしい作品!
まず正直に言います。タイトルは魅力を感じにくいですし、キャラクターデザインもどこかB級感が漂っています。試写で見るまでは「たぶん日本の学校を舞台にした自主製作映画のような作品だろう」と。
ところが、全くスケール感が違っていました!
「日本の学校を舞台にした自主製作映画の物語」どころか、「ハリウッド(正確にはニャリウッド)を舞台にした本格的な実写映画製作の物語」でした。
アニメーション映画なのでキャラクターは日本語を話しますが、書き文字はすべて英語です。
「ポンポさん」というのは、「ジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネット」という映画プロデューサーのあだ名で、パッと見に反して、内容はかなり本格的な作品だったのです。
本作では、映画製作の舞台裏をテンポよく見せてくれます。
特に、「編集」を大きなテーマにしているだけあって、ここが大きな見どころの一つになっています。
エッジの効いた映像表現と、名作になるためのテーマを織り交ぜながら「夢と狂気の世界」を巧みに描き出しています。
これは、間違いなく名作と言える映画です。
私たちはふだん映画を見ますが、その理由はそれぞれあるでしょう。
ただ、本作には、誰もが共感できるような「答え」が描かれていると思います。
実は、本当に凄い作品は、本作のような「夢と狂気の世界」から生み出されているものなのです。
クリエイターらの「夢と狂気の世界」があってこそ素敵な時間が生まれているのです。
本作のような舞台裏に思いをはせる習慣が大切で、それによってもっと映画が好きになれるのだと思います。
この映画が90分の理由
軽やかに鮮やかに、映画への愛をつむぐ
原作は杉谷庄吾【人間プラモ】の同名マンガ。
【ストーリー】
ジーンは映画の都ニャリウッドの制作会社"ペーターゼン・スタジオ"の社長であるポンポさんのアシスタントとしてはたらく、監督を夢見る若者。
忙しく立ちはたらく毎日の隙間隙間に、美しい光景を見つけては、いつか自分の作品をつくりたいと気持ちを高めていた。
そんなある日ポンポさんに呼びだされ、新作映画『MEISTER』の監督に抜擢される。
おなじく抜擢された主演女優のナタリー。
オーディションに落選しつづけたさなかの呼びだしに恐々としつつ、スタジオで顔あわせする二人。
ジーンとともに手さぐりで演じるキャラクターと映画としての表現を学びつつ、自分にそなわった良さをいかに表現すべきかを磨きあげてゆくナタリー。
他のスタッフが、まだ原石の彼らを、陰に日向に支えて、映画撮影は順調に進んでゆくのだが。
いやーいいもの見ました。
軽やかに鮮やかに、作品をワンランク上へとみちびくポンポさんと、高額の制作費や労力を必要とする撮影とその編集に煩悶しながら、作品としての純度を高めてゆくジーン。
主演の、世界最高の俳優と名高いマーティンが、若い彼らに現場人としてのふるまいを教え、さらにそれを作品へと昇華させる。
これらをハリウッドでトレンドの映像手法で、作品全体を彩るっていうややこしい離れわざで、統一感をかもしてます。
ストップモーションの画面もゴージャスで、世界各地でおこなわれるロケシーンも手間がかかってて、ビッグビジネス感に一役かってます。
また天候表現がいいんです、スイスの撮影のシーンなんか特に。
ラストのセリフもいい。
若いころのノーランが言いそう笑
アニメ映画は作業フローの構造上、創ってたシーンを切るという編集はあんまりやらないんですけど、『AKIRA』なんかは完全版として大友克洋自身が描き足したパージョンでソフト化したりしてます。
そんなこだわりのおかげで製作費の回収に20年近くかかったってウラ話も聞こえてきますが。
全編にハリウッド映画への愛あふれる逸品。
アニメ好きでエンターテイメント映画好きならぜひぜひ。
上映時間が90分のとこです
作品を観てみたくなる
予備知識なしで最後まで見た
まったく何の予備知識も無しに、おすすめ録画に入っていた映画を再生したところひきこまれました。「こんなつながりもあるんだなぁ」などと、不思議な感慨にふけっております。
なにしろ最近は2時間の映画を見る時間を作ることさえ億劫で、見始めたと思ったら、他のことに気を取られ、途中で頓挫してしまうことがほとんどです。
映画館で集中して見れば、なんとか「完走」出来るのですが、見に行きたい気持ちにさせてくれる映画が少ないのです。
だからこそ、ポンポさんがこだわる90分という時間に共感するし、映画を見るという行為自体に焦点を当てた映画は、意外と少ないのだと改めて気づかされました。
もうひとつのフックが、コッテコテのアニメ絵であるという点。
上位概念はありませんが、邦画に関して言えば、明らかにアニメが実写作品を凌駕している現実があります。作品世界でのニャリウッドというのはどう考えてもハリウッド映画のことであり、「門前の小僧習わぬ経を読む」を軸にストーリーが展開していきます。アニメ絵に対する拒絶反応さえなければ、実写作品と同じアプローチで映画を語っているのです。
そういう意味では、実写とさえ言えるでしょう。
近年のアニメ『THE FIRST SLAM DUNK』『すずめの戸締り』も、アプローチこそアニメの手法をとっていますが、出来上がりは、もはや実写と言ってもいいでしょう。
トム・クルーズが、見たことのない絵作りに腐心するように、実写であるか、アニメーションであるかは、表現のひとつの手段に過ぎないと思いました。
どうやら原作があるようで、どれほど忠実に映像化されているのか知りませんが、こんなふうに見せてもらえたことに感謝です。
しいて言うなら、劇中劇の形式をとっているので、完成した映画が、どれほど素晴らしいものであるのか、その片鱗だけでも見せてほしかった。
映画が好きにとっては楽しめる作品
ごめんなさい無理です
この映画、起承転結のあるサクセス・ストーリーの展開部分に説得力が足りません。困難の提示>解決のプロセスを、登場人物の「僕は映画が好きなんだー!」(ここでJPOPがガンガン鳴り響いて、画面が七色に光ったりする)という「演出」だけで済ませてしまうのは如何なものかと思います。映画作りパートのディティールも納得感を生み出す程ではありません。アニメーション専門学校のCMならこれで十分、しかし1時間半の尺を持つ映画であれば語るべき物語があるはずです
作中、主人公の心境と劇中劇を重ねる演出に結構な尺が割かれていますが、技巧的な演出の前に基本的なプロットに気を使ってほしい。象徴的なのは映画オリジナルキャラクターのアランがストーリー上のわかりやすい粗になっている点です。脚本兼任の監督が文芸面に関してあまり明るい方ではないのだと想像します。アニメーター出身監督や演出屋監督が陥りやすい失敗パターンだと思えば、この映画の全体像に合点がついてしまいます
ポンポさんという超常的なキャラクターを中心に据えている分「何でもあり」な筈なのに、それでも許容ラインをはみ出してしまう杜撰な作劇。映画大好きな私としては、これを好意的に評価するのはちょっと難しかった
何度でも観たくなる
なんでポンポさんかわからんけど、超よく出来た作品
初めは舐めてました、けど考えが変わりました。
フレッシュな映像で熱で語られる映画愛
生きる事は選択の連続
敏腕プロデューサーポンポさんのアシスタントのジーンフィニはポンポさんがB級映画ばかりプロデュースしていると思ってポンポさんに聞いてみた。
初めて観たけど、どうもポンポさんはプロデューサーの持つべきものを全て持ち合わせているようだ。プロデューサーの仕事は人の見極めなんだね。ポンポさんはジーンに15秒スポットを作れと言ったりして。幸福は想像の敵でジーンには目に光が無かったから期待しているんだってさ。そして自分の直感を信じて映画を創る。でも長い映画は作らない。なかなか真理を突いた様な台詞の言いまわしにちょっとドキッとするね。半信半疑で観てたけど、なかなか面白くて引き込まれたよ。生きる事は選択の連続だ。やっぱり映画作りは大変 なんだね。
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